出版社内容情報
戦時下、中国や南洋へ仕事のため単身渡った女性たち。なぜ彼女たちはわざわざ戦地に近い場所に職を求めたのか。知られざる歴史に迫る。
【目次】
内容説明
仕事のため、単身大陸へ、南方へ―それは報国か、自己実現か、縁談拒否か。
目次
序章 戦時期に海を渡った女性たち
第1章 外地へ渡る女性たちを映し出すマスメディア
第2章 なぜ女性たちは外地を目指したのか
第3章 中国大陸に渡る
第4章 満洲の女
第5章 南方へ渡った女性たち
第6章 戦地で働く女性たち
終章 「脱出」の行く末
著者等紹介
飯田未希[イイダミキ]
立命館大学政策科学部教授。大阪大学文学部修士号(英文学)。ニューヨーク州立大学バッファロー校修士号(女性学)、博士号(社会学)。専攻は社会学、文化研究、ジェンダー論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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hitotak
10
戦前から戦中にかけ、中国大陸や南方で、陸海軍や満鉄・民間企業から事務員やタイピスト等の女性向けの求人が大募集され、主に高学歴の女性が大挙して外地へ向かった。結婚圧力から逃れ、お国の為というやりがいのある仕事を求めての事だったが、結局内地と変わらぬ男性の補助的な仕事であり、敵軍の攻撃に晒され、結婚相手には内地女性を望む同僚男性達の女性従業員への侮りやセクハラもあり、思い描いていたことと違う現実があったようだ。詳しい情報も少ない外地に就職する勇気に感心するが、国内の暮らしがそれだけ息苦しいものだったのだろう。2025/10/26
BECHA☆
9
戦時中に外地へ仕事をしに出て行った女性の記録を探して検証(?)された新書。内地にいるよりも働き甲斐は有ったのか、慰安婦まがいの扱いではなかったのか、いわゆる事務職を女性と指定して募集していたのに驚く。中国と東南アジアで温度差はあるけれども、都会へ就職する事の延長線上の進路であったようにも見える。言論統制の中、戦地の実態は内地には伝わっていなかったせいも有ろうが終戦直前まで派遣されていたことにも驚く。「パーマをあてる」という行動が与える印象をどう受け止めるのか、百人いれば百通りという言葉を思い出した。2025/11/30
あまいちろう
4
前作「非国民な女達」が新鮮だった。あまり研究されてなかった分野に挑んだ作品。戦前から戦中にかけて軍関係を中心に中国大陸や南方からの求人があったことは想像出来るが、求人に応じて多くの若い女性が海を渡ったことは知らなかった。戦争で国内の締め付けが強くなる中、お国のためとの思いもあって海外飛躍を図ったのか。作者が現地企業の社内報から女性の声を拾ったのも工夫だと思う。それにしても、サイパン島陥落の後に、航海に危険が伴う中、南方に向けた求人があり、それに応募した女性の話は切なかった。2025/11/21
Lilas
3
驚きをもって読んだ良書。新聞の書評で知り、読み始めは硬くて中公選書ハードル高し!と苦しんだけれど実例が出始めたら面白くて止まらなかった。戦時、単身外地で就職した女性がこんなにいたなんて。男性に意味づけされた彼女らの苦しみが、’90年代に総合職で働きだした自分の苦しみと同じで、変わっていないことに憤慨。働いて納税し、子どもを産み育てることを「輝く」などという気持ち悪い言葉で推奨され、家事負担も減らない現在の女性の状況は、良くなっていると言えるのでしょうか。 2025/10/28
pati yayan
2
戦時中の戦地での女性の労働者となると、従軍看護婦か従軍慰安婦ぐらいしか思いつかないが、戦地となっている外地で普通に働く女性に焦点を当てている本。タイピストとか電話交換手とか言われてみれば需要はあるし、戦地とは言え街があれば日々の暮らしを支える仕事はあるはず。それでも親族を振り切って外に飛び出す行動力は凄い。高等教育を受けたものの能力を評価されず社会通念に縛られた内地にいるよりは外に出て自由になりたいという想いが強かったのでしょう。戦後80年も経って、その辺りの社会通念が相変わらずなのが情けない。2025/11/17




