内容説明
嘘、皮肉、罵倒、偏見…。面と向かっての会話であれ、ネットでのやりとりであれ、言葉によるコミュニケーションはしばしば暴走し、相手に対して「悪意」の牙を剥く。その悪意はいじめや差別、クレーマーやセクハラ、政治家の問題発言を生む。一方で、意図していないのに加害者になってしまうこともある。悪意はなぜ生まれ、どう表現されるのか。どうすれば、悪意に立ち向かえるのか。社会心理学・言語心理学の観点から考察。
目次
第1章 コミュニケーションのしくみ―言語、非言語が伝えること
第2章 うっかり口にする―言い方の問題、中身の問題
第3章 偏見を抱く―対人認知の偏り
第4章 攻撃する―悪口、皮肉、からかい
第5章 こじれていく関係―セクハラとクレーマー
第6章 嘘をつく―看破の手がかりは?
第7章 悪意が広まる―ヘイト・スピーチを生むもの
終章 「悪意のコミュニケーション」と向き合うために
著者等紹介
岡本真一郎[オカモトシンイチロウ]
1952年、岐阜県生まれ。1982年、京都大学大学院文学研究科博士課程(心理学専攻)満期退学。愛知学院大学文学部講師、助教授、教授等を経て、同大学心身科学部心理学科教授。1994年、ブリストル大学客員研究員。博士(文学)。専攻・社会心理学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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びす男
58
悪意ある(と理解される)コミュニケーションについて、細かく分析し、体系化している。たくさんカテゴリーの名前が出てくるが、覚えるような必要はないだろう。普段なんとなく感じている気配や気配り、会話の機微に、それらしい名前がついただけだ。この本を読んで良かったのは、そうした議論に目を通すうちに、「僕のあの言動は何に当てはまるのかな」などと客観視するきっかけになったことだ。コミュニケーションの手段は様々ある。強く言うだけが指導ではないし、ハイハイと頷くだけが恭順でもない。2016/08/08
佐島楓
54
相手に配慮すること、寛容であることを大事にし、無意識のうちに培われた差別や偏見を捨てたいと思った。この世界で生きる以上、困難なことなのかもしれないけれど、あきらめてしまいたくはない。2016/09/11
とくけんちょ
38
あまり新しい知識の獲得とまではいかない内容であった。最終的には、悪意からは出来るだけ距離をとるべきってことでいいのか。通読はしたものの、いまいち、残ったものがないような2018/10/23
香菜子(かなこ・Kanako)
36
悪意の心理学―悪口、嘘、ヘイト・スピーチ。岡本真一郎先生の著書。悪口、嘘、ヘイト・スピーチ、誹謗中傷、いじめ、嫌がらせといった行為は、人間が持つ悪意、先入観、嫉妬心や劣等感に結びついている。自分は虚言癖や醜悪発言癖がないだろうかと改めて自問自答するきっかけになりました。2018/08/13
かごむし
35
コミュニケーションというもの自体の難しさを改めて感じた。相手に伝えたい意図、その表出としての言葉・表現、相手が受け取るこちら側の意図、という当たり前の伝達が、子供の頃に行った伝言ゲームのように実はとても難しいゲームなのだということがわかった。一つ一つは、言われるまでもなくわかりそうなことを、慎重に検討されながら論が展開されていくが、根拠があり、説得力があって重みがある。どのようにも解釈できそうな、日常のコミュニケーション風景を、一貫した方針に基づいてぶれずに説明されていて非常に読みでがあった。面白かった。2016/08/29