感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ジュンジュン
10
「ウェーナーは闇と光の敷居に立っている。体の背中の方は<過去>の闇にすっぽり隠れている」(98p)。戦前はドイツ共産党、戦後は社民党(西ドイツ)に転向し、激動の20世紀を生きた政治家。特派員時代、ほんのわずかな出会い(とあるスーパーですれ違う)をきっかけに書かれた本書も、伝記としては”闇と光”があると思う。まだ引退していない政治家を書く難しさと著者の彼に対する愛着が同居する。2020/11/04
千住林太郎
4
ドイツ共産党員として革命に燃えたウェーナーは、師ウルブリヒトとの対立を経て社民党員に転向し、戦後の西ドイツ政界で重きをなす。 保守政権との大連立、ブラント政権の成立と崩壊、戦後ドイツを揺るがした彼の謀略の彼方にあるのは労働者によるドイツ統一の理想であった。 権力への冷徹な認識と理想の実現のために汚れることをためらわない行動力が同居した政治家の魅力を描いた本で面白い。 1982年の本なので、エピローグには新冷戦の暗さが漂うが、まさか10年もせずにドイツ統一が訪れるなど著者もウェーナーも思わなかっただろう。2022/08/14
さいしーぐ
3
KPDからSPDに転向し、陰謀を駆使してSPDを国民政党の一角に仕立て上げた男の伝記。ウルブリヒトの弟子でホーネッカーの師匠という想像以上にKPDの中枢に食い込んでて驚いたし、シューマッハに仕えていた姿は周囲から不気味がられていたんだろうなと思う。ここまで策を巡らせていたならギヨーム事件を察知できたはずだし、ブラント政権を潰すためにあえて揉み消さなかったのかなという気がしてならない。長生きしてたらCDUのコールが主導したドイツ統一を後手のSPD含めて手厳しく批判してそう。 2023/02/28
-
- 和書
- 月夜のみみずく