出版社内容情報
半世紀ぶりに発掘された米将校246人、300時間の肉声テープが語る「大空襲」の真相。
内容説明
第二次大戦末期、わずか一年足らずの空爆で約46万人もの命が奪われた。すでに敗色濃厚の日本に対して、なぜそれほど徹底的な爆撃がなされたのか。最大の理由は、空爆を実行したアメリカ航空軍の成り立ちにあった。当時、陸軍の下部組織という立場にあり、時に蔑まれてきた彼らが切望するものは何だったのか。半世紀ぶりに発掘された将校ら246人の肉声テープが浮き彫りにする「日本大空襲」の驚くべき真相とは。
目次
序章 死蔵されていた空軍幹部246人の告白
第1章 “空軍の父”アーノルドの野望
第2章 航空軍“独立”への切り札=B‐29
第3章 アメリカ航空戦略の原点・ミッチェル
第4章 航空軍の真価が問われた日本空爆
第5章 机上の空論だった精密爆撃
第6章 焼夷弾爆撃へ追い込まれるルメイ
第7章 こうして無差別爆撃は決行された
第8章 空爆はなぜ2000回にも及んだのか
第9章 受け継がれる勝者の思想と戦略
著者等紹介
鈴木冬悠人[スズキフユト]
1982年、富山県生まれ。慶應義塾大学法学部卒業。NHKグローバルメディアサービス報道番組部ディレクター。主な制作番組はBS1スペシャル「なぜ日本は焼き尽くされたのか」(衛星放送協会オリジナル番組アワード最優秀賞受賞)、など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kinkin
127
1945年の東京大空襲を含め日本の都市で行われた空襲。その空襲の背景にある航空兵器=爆撃機の進化。空襲を計画して実行した司令官や将校たちのこと、東京大空襲の責任者であったカーティス・ルメイのことなどが膨大な記録や関係者のインタビューと共に書かれている。東京大空襲は多くの犠牲者が出た。しかしカーティス・ルメイが20年後日本に訪れた時に勲一等旭日大綬章を与えたということにショックを受けた。大勢の日本人が焼夷弾で焼かれて死んだのになぜ落とされた日本が勲章を与えたのか、この経緯を知りたくなった。図書館本2022/03/14
skunk_c
73
46万人(原爆込)もの犠牲者を出したアメリカ軍による日本への空襲の大きな動機が、当時陸軍の下部にあった空軍の独立であったことを、BSでも紹介されたという(未視聴)「肉声」と番組作りの中で得られたと思われる資料を再構成して明らかにしたもの。著者は「道義的責任」に対する実行者の「反省のなさ」をかなり問題にしているが、そもそも戦争というものがそうした正常な価値観を奪うのではないか。アメリカがこの後空爆で戦争に勝てるとベトナム戦争で膨大な爆撃を(ラオスを含め)行い、多くの犠牲者を出しながら勝てなかった事実は重い。2021/09/20
ひろし
59
実に46万人が犠牲になった日本大空襲。実行犯である米軍幹部の証言から、米側の事情、つまり悲願であった空軍の独立と、多額の開発経費をかけた兵器:B29の有効性を示さざるを得ないため、当初の精密爆撃から非人道的な無差別爆撃に至ったプロセスがよくわかった 。組織上やむを得ない状況になると倫理観が吹っ飛んでしまうのは、まさに企業犯罪と同じ構図。しかし全て状況のせいにして個人を免責するのもおかしいと思う。戦争というと殺人が正当化され、無辜の市民が殺される不条理と憤りを強く感じる。2021/12/10
たまきら
43
MIND BLOWING!46万人近い人が死んだ日本大空襲。あまりにも大規模でいまだにすべての被害がきちんとまとめられていないこの空爆作戦は、空軍をアメリカに作ることを悲願としていた男たちが「結果を出すために」行ったものだった。そして、白羽の矢が立ったのがルメイだったんだ…。その恐ろしい使命感に呆然とし、ページをめくる手が止まらなかった。カーチス・ルメイの孫がコメントしていることにも驚いた。このドキュメンタリー見たい!ていうか、このインタビュー音声聞いてみたい!見てからまた再読するつもり。2022/03/21
さきん
31
飛行機の実力を認めてもらうためには、結果として戦果が求められるのは必定。当時、飛行機の運用を一番自由におこなえていたのは、空軍を作っていたドイツ軍だった。ルメイだけではなく、組織の構造が作戦の残虐性拡大に拍車をかけたという概要で全くその通りと思った。もちろん、絨毯爆撃は心理的ダメージや生活物資破壊の狙いもある。昭和天皇のルメイへの勲章授与というのは、政府が決めたと思うが、やはり愚行という他ない。2021/09/17