内容説明
愛は続く。一方的に、執拗に。永遠に。「ぼく」につきまとい、病的なまでに愛を乞う男。その男の存在すら信じず、「ぼく」の狂気を疑う彼女―。孤独と恐怖、強迫的な愛の織りなす奇妙な三角関係。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まふ
106
「ド・クレランボー症候群」という同性愛における宗教愛を帯びた《被愛妄想》を描いたもの。本編はその具体的事例のような形で、不思議で迷惑な一方的愛の始終を描く。主人公の科学ジャーナリストであるジョーは気球体験飛行で生じた死亡事故の共同責任の念に駆られるがこの自責の念が並行的に語られる。終わってみればなかなかよくできたプロットであった。人間の精神の襞は歴史を重ねるにつれて複雑化し、原初化し、奥深く広範かつ微細に拡がるものと改めて感じた。G1000。2023/09/18
どんぐり
86
エロトマニア、別名クレランボー症候群。自分が相手に愛されていると思いこんでいる妄想性障害の青年ジェッドに「自分なしでは決して真の幸福が見つけられない」とつきまとわれるジョー。男にストーキングされ、次第に狂気じみた行動に出る。いったいどちらが常軌を逸しているのか、ジョーが銃を入手する最後までわからない。この作品は、『Jの悲劇』として映画にもなっている。マキューアン、これで6冊目。2017/03/01
akio
42
久しぶりのマキューアンにそうそう、これこれと感じました。理性と感情がありありと自意識過多気味に語りから溢れ、緊張感と苦しさに捕らわれたような読まされた読書でした(嫌いじゃないです笑)。「もっとも尊重される経験のひとつである愛が精神病と区別がつかないという事実は、時としてわれわれ人間には承認しがたい」。クラレンボー症候群を題材に描かれるのは愛の在り方。後書きの原題「endurng love」をどう読むかという考察が、作品を表しているようで面白いです。【G1000必読イベント】2017/05/18
Apple
37
愛によって人々が自らの作った物語の中にはまり込んでいく様子をエキサイティングに描いている凄い作品だと思いました。クレランボー症候群で病的に愛を乞うパリー、周囲の出来事を理路整然としたストーリーで当てはめたいジョー、ジョーを信じなかった妻クラリッサという三角関係がとても巧みに作り上げられたものだと思いました。気球の事故で夫を失った女性が、夫の浮気を強く疑っていたあたりの話もテーマに沿ったものかもしれず、印象的でした。アクションを書ける数少ない作家、と評されてますが、確かに所々臨場感があったように思いました。2025/05/06
ゆきらぱ
28
これ良かった。気球の事故に居合わせた何人かがその出来事で人生が変わってしまう話。主人公夫婦、ジョーとクラリッサだけだったらジョーを愛してしまうパリーを交ぜた三角関係なだけだが、事故で死んだジョン・ローガンとその妻の話が入ることで地に足が着いた話になっている。ローガンの妻が良い。クラリッサは浮世離れしてるから…イアンマキューアンの描く女性はこんな感じの人が多いな…2019/03/28