内容説明
広大な邸宅に独居する老いたイギリス人公爵。彼は突然何かに駆り立てられて、敷地内の地下に巨大なトンネルを掘り巡らせた。老いに怯える公爵は、トンネルを徘徊し、幼い頃親に手を引かれ海辺で見た光景の謎に、やがて突き当たる…。十九世紀に実在した公爵をモデルに、精緻な調査力と奔放な想像力を駆使した衝撃のデビュー作。ブッカー賞最終候補の処女長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
152
広大な邸宅に 一人住む 公爵のお話である。 退屈な日々をもて遊ぶ公爵が語る ひどくどうでもいい話の数々 … 実在したポートランド公爵をモデルに した物語らしいが、正直 本作のチグハグな展開は よくわからなかった。2019/05/24
HANA
64
屋敷の地下にトンネルを掘ったり、独自の奇行や論理を持つ公爵。基本公爵様の独白で進行するのであるが、読み進めるたびにその独特の論理に捕らわれて抜け出せなくなりそう。ある時は自分の身体の事だったりある時は自然の事だったりと、様々な事柄についての独自の考えが極めて可笑しい。ただ読んでいるうちに公爵自身の老いの事だとか過去の回想だとかが、その根底に潜んでいる事に気が付く。まさに花火の如く、面白うてやがて哀しきとはこの事であったな。ラストは急展開すぎて反応に困ったけど、想像が内側から外側に溢れ出したようにも感じた。2017/07/09
藤月はな(灯れ松明の火)
36
健康を気にし、自分の失われつつある記憶への恐怖から穴を掘ることを命じた公爵様。私、最初はてっきり、公爵様のことをP・G・ウッドハウス作品のふわふわお頭なエムズワーズ卿みたいに可愛らしいかなと微笑ましく、見てましたよ・・・。でも健康にこだわるが故に自分の骨や筋を按摩に違えられても平気な様子や周囲からの視点を読むにつれてだんだん、不安になり、挙句の果ての行動に悲鳴が出そうになりましたよ!それにしても公爵様は自分の虚無から逃れられなかったのは切ないな・・・。なんちゅう、微笑ましくもグロテスクな作品なんじゃ・・・2015/12/11
エムパンダ
20
『こうしてイギリスから熊がいなくなりました』がよかったので、著者のデビュー作に挑戦。邸の広大な敷地の地下にトンネルを張り巡らせた老公爵の日記を中心に、所々に使用人から見た公爵の奇行が差し挟まれる。敷地内や領内を出歩いたりエディンバラまで旅をしたり、心の内奥に闇を抱えながらも精力的に動く公爵はチャーミングで、正常と狂気の狭間を揺れ動く心情をハラハラしながら見守った。原題は“The underground man”。2021/09/16
秋良
14
トンネル掘りしながらなんかよく分からないうちに自然と狂っていく公爵の話。だんだんと物忘れが増えていく老いの様子はリアルだけど、全体としてはなんと書けばいいのか分からない。うーん、明らかにやばい行動が増えていく主人に、動揺しながらもクールに仕える使用人たちに笑う。いよいよ狂気に陥った後半、公爵がとった行動は笑えばいいのか怖がればいいのか何なんだ?とにかく最初から最後まで不思議な話だった。2024/03/25