内容説明
夏目漱石の遺作を書き継いだ『続明暗』で鮮烈なデビューを果たし、前代未聞のバイリンガル小説『私小説from left to right』で読書人を瞠目させた著者が、七年の歳月を費やし、待望の第三作を放つ。21世紀に物語を紡ぐことへの果敢な挑戦が、忘れかけていた文学の悦びを呼び招く。
著者等紹介
水村美苗[ミズムラミナエ]
東京生まれ。12歳で渡米。イェール大学仏文科卒業。同大学院修了後、帰国。のち、プリンストン、ミシガン、スタンフォード大学で日本近代文学を教える。1990年、『続明暗』を刊行し芸術選奨新人賞を、1995年には、『私小説from left to right』で野間文芸新人賞を受賞。また、1998年、辻邦生氏との往復書簡『手紙、栞を添えて』を刊行
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぶんこ
45
上流階級のよう子と雅之と貧しい太郎。昭和の半ばなのに、まるで明治・大正の時代ではと思ってしまいました。よう子に「あなたとは結婚しない。恥ずかしい」と言われ、アメリカに渡って成功したが、錦を飾れる故郷も喜んでくれる家族もいない太郎さん。そして太郎さんの事が忘れられず、夫である雅之さんに「タロちゃんが戻ってきたら、あたしはその日のうちにタロちゃんと家を出て行ってしまっていい」と言わせるよう子さん。なんだか皆が狭い世間の中だけで生きているようでした。2015/09/09
ヒグフミ
10
濃密ですごく面白かった。下巻は一気読みでした。三姉妹と家族と女中という立場の人との特殊な関係性にどっぷり浸かって、それぞれの人の切っても切れない、抱える複雑な感情が心に迫ってきた。こういう大河小説、大好物デス。2012/06/11
ふみふむ
6
冨美子を通じて語られる太郎とよう子と純愛が辛く切なかったが、経験できない人生を体験したような得をした気分になった。古典小説のような重厚さと質の高さだった。2012/04/01
Hisashi Tokunaga
5
「大田文学ってどう」;軽井沢、成城、あるいはNYでの日常生活に対し、東一家の転居先は大田区の蒲田ー下丸子。この風景、風土の対称を巧みに織り込んだ作者のゲニウスロキ観。とにかく一気に読まないと、土屋富美子の語りのつじつまが読者の中で合わなくなる怖れあり。というわけで、私も一気読みしました。2013/06/19
わかめ
5
ずっしり重い上下巻、威風堂々のタイトル、格調高い表紙絵…。上巻は物語の導入部なのですが、これが長い長い長い。しかし、この丹念で執拗な導入部が明けると、あとは雪崩れるがごとく。下巻に突入してからは、息つく暇もないほどに夜通しで読み切りました。最後のページを閉じても、深遠なる物語の海にたゆたうように、いつまでもその余韻にひたっておりました。古き良き昭和の時代、軽井沢を舞台に一族の繁栄と斜陽。貧しく不幸なる生い立ちの青年とお嬢様との壮絶なまでに狂おしい恋。重層な語りの構造。これぞまさに、本格小説でっす。2012/10/13
-
- 電子書籍
- 今度の恋は勝ちましょう【マイクロ】(4…