出版社内容情報
「新しい故郷」を求めて「難民」になる――。そんなに遠い世界の話ではないのです。戦禍や迫害を逃れ、住み慣れた家、故郷を離れて、難民となった人々。日本とシリア、二人のビデオ・ジャーナリストの物語を軸に、クロアチアの老女、満洲からの引揚者、トルコの海岸に流れ着いたシリア人の小さな男の子など、さまざまな難民たちの姿を多様な形式の20章で描きだす。今どうしても書かざるを得なかった作品集。
内容説明
ある日、難民になる。「新しい故郷」を求めて、歩きだす。そんなに遠い世界の話ではないのです。シリアで、クロアチアで、アフガニスタンで、満洲で、生きのびるために難民となった、ふつうの人たち。その姿と心を、てのひらで触れるようにして描きだす。
目次
失われた子供たちの海岸
ホムスの戦い
ブーメラン
砂漠の検問所
アランヤプラテート 一九九〇
バスとトラックとゾディアック
アイラン・クルディ
ジャーニー
艱難辛苦の十三箇月
ヴルニャチカ・バーニャ
お婆さんと大きな樹
ベルリンへ
ノイエ・ハイマート
カフェ・エンゲルベッケンでハムザ・フェラダーが語ったこと
ブーメランの軌跡
小冬童女
サン・パピエ
今は行けない二つの場所
とはずがたり
作者自身による解説と最後の引用
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぼっちゃん
47
会社のCTOの方が2024年のマイベスト本として紹介されていたので読んだ。戦禍や迫害から逃れるため難民となった人たちの物語だが、短編の物語の中に他の作家の詩などを形式が混ざった構成で作られた作品で文学というかルポタージュのようでもあった。どこまで理解できたかは自信がないが、難民の苦悩は他人事ではないということを描こうとされた作品なのだろう。【図書館本】2025/01/11
007 kazu
34
西北欧を目指す、シリアの難民をジャーナリストの視点から追ったり、当事者から追ったりを中心とした連作短編集。 といっても間に突然、日ソ戦争時の避難民の話も混ざったり、詩があったりと幹となる話がありつつもあっちに行ったりこっちにいたりと不思議な読後感。 被差別者が隣国に逃げ、国境のそばから妹に電話をする話が印象的。 日本でもわずかながらウクライナからの避難者を受け入れている方もいるが移民もそうだが、難民問題には疎いというか無関心だよなー(自分含めて) ノイエハイマート:新しい故郷。 ★3.5 2024/09/11
rosetta
32
★★★☆☆タイトルはドイツ語で新たな故郷、あるいは母国の意味。色んな媒体に発表した細切れに書下ろしである高齢のドキュメンタリストとシリアのビデオジャーナリストとの友情を絡めて。難民問題をとりあげ、フィクションとして読者の身に沿う物語に仕立て上げる。独裁者に専横される国と自由に無政府主義が蔓延る国と、どちらが国民にとって住みやすく幸せを得られるか?国民が自分の住みたい国を選べるなら圧政を敷く国からは国民がいなくなるだろう。それらを阻止するために出国者を殺すなんて国家のそもそもの存在意義がない2024/09/12
えりまき
16
2024(191)ノイエ・ハイマート=新しい故郷。「難民」がテーマの短編集。「そこで気がついたのだ、軍に入ろうが入るまいが、自分の将来は同じなのだと。いずれにしてもこの社会では最下等の一兵卒なのだ。出口はすべて入念に閉じられている。張るべき局面でだけ重要されて、それで頭打ち。」。どこへ逃げれば、何を目指せばよいのか考えさせられました。2024/07/12
コニコ@共楽
11
題名は『ノイエ・ハイマート(新しい故郷)』。もう一つの故郷という言い方はあるが、元々の故郷が失われた人たちの、世界の現実の話。ニュースで見る難民は、遠いところで起こっている話に聞こえるのに、この本では、読者がその場の目になって見ている感覚になる。”人を守る国境が人を疎外し、排除し、外に押し出し、どこでもないところへ行けとわめき立てる。どこでもないところnowhere、誰でもない人nobody。否定形でしか定義されない存在。ではこう語る私は何者なのだろう?あるいは、何者でないのだろう?”本文の言葉が刺さる。2024/09/12