内容説明
幕末維新の動乱を駆け抜け、蝦夷地への〈北航の夢〉に賭けた若き日の榎本武揚と、その数奇な艦名が、時代と自らの運命を予言したかのように、近代日本の夜明けとともに北斗七星輝く北海の波間に消えた、幕府軍艦〈夜明け前〉=開陽丸の激動の生涯!綱淵謙錠、会心の歴史長編小説。
感想・レビュー
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さっと
5
榎本武揚という人は正直よくわからないがたいへん魅力的な人物である。生粋の江戸っ子であり、オランダ留学を経験した開明派であり、旧幕軍を率いて蝦夷共和国を築いた武人であり、明治新政府の要職を歴任した政治家でもあって、それらの行動のバックグラウンドや幕臣として日本国民として二つの時代の生き様を考えるときに謎解きのような楽しみがある。それはさておき、タイトルは榎本武揚と開陽丸ではあるが、オランダ留学仲間の、筆まめな沢太郎左衛門(榎本海軍の片腕)や、お役目上おかたく留学生たちにあたる内田恒次郎など脇役の個性も光る。2019/05/06