出版社内容情報
ままならない日々を生きる人間のすぐそばで、虫や草花や動物達が織り成す、息をのむような不可思議な世界。15篇を収める初短篇集。それぞれに無限の輝きを放つ、15の小さな場所。待望の短篇集。ふきのとう。ヒヒ。彼岸花。どじょう。葦。鶴。おたまじゃくし。ままならない日々を生きる人間のすぐそばで、虫や草花や動物たちが織り成す、息をのむような不可思議な世界。暮らしの中にある不条理と喜びを鮮やかに捉え、風景が静かに決定的に姿を変える瞬間を克明に描き出す、15篇の物語。芥川賞受賞後初著書となる作品集。
小山田 浩子[オヤマダ ヒロコ]
著・文・その他
内容説明
ふきのとう。ヒヒ。彼岸花。どじょう。鶴。葦。おたまじゃくし。ままならない日々を生きる人間のすぐそばで、虫や草花や動物たちが織り成す、息をのむような不可思議な世界。暮らしの中にある輝きと不条理を鮮やかに捉え、風景が静かに決定的に姿を変える瞬間を克明に描き出す、15の物語。芥川賞作家、待望の初短篇集。
著者等紹介
小山田浩子[オヤマダヒロコ]
1983年広島県生まれ。2010年「工場」で新潮新人賞を受賞してデビュー。2013年、同作を収録した単行本『工場』が三島由紀夫賞候補となる。同書で織田作之助賞受賞。2014年「穴」で第150回芥川龍之介賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
424
いくつかの文芸誌に書かれた全部で15篇からなる短篇集。全体を最も端的に象徴するのは、冒頭に置かれた「うらぎゅう」か。語り手にも、そしてもちろん読者にもとうとう最後まで「うらぎゅう」の正体はわからない。他の村人たちには自明のこととして了解されているのにである。そもそも、そこはかつてよく知悉していたはずの土地だった。にもかかわらず、なんだか異世界に紛れ込んだようでもある。それは、より陰湿で小さなカフカの迷宮に例えられようか。しかも、どこか一点で他界とも接点を持っていそうなのである。他の作品も共通して⇒2021/04/11
藤月はな(灯れ松明の火)
98
作品から作者の姿が浮かんでくるものがある。多分、この作品集はそんなタイプだ。「うらぎゅう」の写真の焦げ跡、「延長」の継父が日常的な事をぼそっと呟く事でその前の意味深な一言がより一層、浮き立ってくるという構成が素晴らしい。視点の切り替えが一瞬、分からなくなる群像劇「動物園の迷子」での子供を無理矢理、思い通りに歩かそうとする母親とそれを苦々しく、見ながらも言い出せない父親のコントラストも良い。「うかつ」のやもり描写も嫌らしい。そう言えば、入浴時にヤモリが肩へ落ちてきて浮かんだ時、可愛くても嫌だった思い出がある2018/07/28
なゆ
98
何ともいえない、この世界観。やっぱりクセになる不穏なザワザワとひっそり感。本から抜け出た今も、日常の景色をひたすら凝視したら歪んでしまいそうな。『広い庭』での細かすぎるほどの観察眼とか、『名犬』の温泉でのおばあさん達の会話とか、そこここに印象的な文章が。なかでも『動物園の迷子』がお気に入り。改行どころか句読点、さらにはかぎ括弧まで排除され、文字がみっちりみちみちなトコロが。耳に入る音は騒がしく、頭の中は混沌、なのに虚ろな感じがありありと浮かび、唸らされた。たまらんなぁ。2018/05/21
うどん
79
不思議な世界に迷い込んだ感じです。句読点がないのも更にそう感じさせました。2018/06/27
Akihiko @ VL
74
小山田浩子さん2冊目の読了。生々しく饐えた匂いにむせ返る。正体不明のザラリとした"ナニカ"が私の真後ろで口を広げて待ち構えているようだ。諦念に支配された田舎が醸し出す濁った空気感は知らず識らずのうちに心の澱を溜めていく。個人的に好みだったのは『動物園の迷子』と『名犬』の2作。心を乱される狂気的な文体に冷や汗が止まらなかった。これぞ芥川賞作家という極めて文学的な作品。2018/06/25
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