内容説明
なぜ優れた哲人皇帝の時代に、「帝国の衰亡」は始まったのか。既成の歴史観に挑む塩野七生版「ローマ帝国衰亡史」がここに始まる。
目次
第1部 皇帝マルクス・アウレリウス(在位、紀元一六一年‐一八〇年)(育った時代;生家 ほか)
第2部 皇帝コモドゥス(在位、紀元一八〇年‐一九二年)(映画と歴史;戦役終結 ほか)
第3部 内乱の時代(紀元一九三年‐一九七年)(軍団の“たたきあげ”;皇帝ペルティナクス ほか)
第4部 皇帝セプティミウス・セヴェルス(在位、紀元一九三年‐二一一年)(軍人皇帝;思わぬ結果 ほか)
著者等紹介
塩野七生[シオノナナミ]
1937年7月、東京に生れる。学習院大学文学部哲学科卒業後、63年から68年にかけて、イタリアに遊びつつ学んだ。68年に執筆活動を開始し、「ルネサンスの女たち」を「中央公論」誌に発表。初めての書下ろし長編『チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷』により1970年度毎日出版文化賞を受賞。この年からイタリアに住む。82年、『海の都の物語』によりサントリー学芸賞。83年、菊池寛賞。92年より、ローマ帝国興亡の一千年を描く「ローマ人の物語」にとりくみ、一年に一作のペースで執筆中。93年、『ローマ人の物語1』により新潮学芸賞。99年、司馬遼太郎賞
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感想・レビュー
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kk
23
五賢帝の掉尾を飾るマルクス・アウレリウスと、その後のタフな時代を象徴するかのようなセプティミウス・セヴェルスの評伝を中心に。賢帝の治世の下、我が世の春を謳歌するローマ帝国。しかし、その空前の繁栄の傍、東北方からは大きな転換の波が、暗い足音とともに兆しつつある。そうした中で、かつてカエサルが標榜した「クレメンティア(寛容)」の精神を忘れつつあるかのような新指導者。時代の転機はすぐそこまで迫ってきているようです。2019/03/21
俊
23
五賢帝最後の一人マルクス・アウレリウスとその息子コモドゥス、そして、数年の混乱を経て皇帝に即位したセプティミウス・セヴェルスの時代を描く。今まで停滞はあっても基本的に右肩上がりだったローマも、いよいよ衰退の時代を迎える。一般的にはコモドゥスの治世からその衰退は始まったとされているが、本当にコモドゥスだけのせいなのか?賢帝と言われるマルクス・アウレリウスにも原因の一旦があるのでは?という著者の提言には説得力があった。確かにマルクス帝は個人としては模範的な人間で、平時の指導者としては申し分ないように思う。 2014/05/09
ロビン
22
11巻は、五賢帝最後の一人マルクス・アウレリウス、その息子コモドゥス、皇帝暗殺を受けての内乱の時代-ペルティナクスの短い統治の後、ユリアヌス、アルビヌス、ニゲル、セヴェルスによる皇位争いー、それを勝ち抜いた軍人皇帝セヴェルスの時代を描く。政治とは非情なもので、セヴェルスが心からローマの繁栄を願って行った種々の改革が、徐々に帝国を変質させ、後々逆の結果を招くことになるという。名君と名高いアントニヌス・ピウスやマルクスが本当に失政をおかしていないかの検証もなされる。段々塩野さんのカエサル熱が感染ってきた・・。2022/08/05
umeko
11
これだけの帝国が崩壊するには、多くの要因があるのだろうが、まだほころび始めたばかり。いよいよ次巻からは、崩壊に向かうのね。2010/12/22
小葉
11
世襲制は内戦を防ぐためのものというのには、第3部の「内乱の時代」を読むとなるほどなぁとも思いますが、若い我が子への世襲・血へのこだわりって、結局は暴君を生んでいるって気もします。カリグラとコモドゥスがだぶって見えます。二人の皇帝の同時就任なんてのがあったんだねぇ。映画っていうのはフィクションであり、必ずしも歴史に忠実ではないというのを心しておかないといけないんですね。2010/02/25