内容説明
映画監督イブ・シャンピとの突然の離婚から彼の急死に至るまでの10年間、女優として、母として、女として揺れ動く思いを綴った自伝的エッセイ。破局を告げられた時の凍りつくような感覚、母と娘、さらに日本とフランスの間にある深い断絶を素直に告白し、パリの街角の風景や、南の島で出会った人々の姿などをエスプリを利かせて描いた好著。日本文芸大賞のエッセイ賞を受賞。
目次
凍えた陽だまり
燃えおちる風景
街の顔 女の顔
ああ西洋、人情うすき紙風船
夏の夜のサン・ジェルマン・デ・プレ
演技ものがたり
碧い眼をした女の子
金は天下の回りもの
海亀島に陽が沈む
流れない河〔ほか〕
著者等紹介
岸恵子[キシケイコ]
横浜市生まれ。女優。1957(昭和32)年、フランス人映画監督で医学博士でもあるイブ・シャンピと結婚のため、渡仏。母の死、娘の結婚、新世紀の始まりを機に、日本に戻り、活動の拠点とする。デビュー作は「我が家は楽し」。他に「君の名は」「雪国」「おとうと」「怪談」「約束」「細雪」などの映画に出演。著書に『砂の界へ』『ベラルーシの林檎』『30年の物語』がある。’96(平成8)年に国連人口基金親善大使を務めた
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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aoko
2
女優の岸恵子さんの離婚から夫の死までの約10年間のエッセイ。離婚、パリでの生活、娘さんとのやり取り、アフリカ旅行、女優の仕事など、興味深い話題が多いけれど、当時(70年~80年代)の文体の特徴なのか、「○○なンです」「ヒコーキ」「ブンガク少女」など、カタカナが妙に多く疲れた。2022/05/12
スー
1
昔の人としては当たり前の書きぶりなのかもしれないけど、文体が独特過ぎる。それが新鮮。でも、今こういう文章を書ける人は日本に多分もういないと思う。何かが失われていってるな、と思う。 でも、それが文化だから別にネガティブな意味じゃないけどね。 半世紀以上も前に、フランスへ嫁いでいった日本の大女優の方のこのエッセイは、面白いけど、全般的に砂がかかったグレーな印象。 きっと、それは彼女がずーっと持ち続けた「根無し感」なんだろうな。 つまり、彼女が感じている世界がそのまま表現されている本ということ。面白かった!2013/01/30
いくたやよい
0
岸恵子を読むのは「わりなき恋」「ベラルーシの林檎」についで三作目。73年の彼女の離婚から83年までの約十年間のエッセイ。時期はそれより早いがほぼ同時代の十年をドイツ、イギリスで過ごした私にはことさら興味があった。はじめ、メロドラマの女優という認識しかなかったので、彼女の才気、筆力、さらに日欧の文明世界を透視する視点の確かさに驚き、共鳴する点が多かった。形容詞の多い絢爛たる文章は最初ちょっと鼻につくが、慣れるとその五七五調が心地よくなるのがふしぎ。もっと読みたい。2017/03/25
Ms.Gordon
0
2003-20042008/02/25
ucodig
0
女優として、女として、自尊心に溢れた一冊。