内容説明
泥棒を生業とする男は新たなカモを物色する。父に自殺された青年は神に憧れる。女性カウンセラーは不倫相手との再婚を企む。職を失い家族に見捨てられた男は野良犬を拾う。幕間には歩くバラバラ死体登場―。並走する四つの物語、交錯する十以上の人生、その果てに待つ意外な未来。不思議な人物、機知に富む会話、先の読めない展開。巧緻な騙し絵のごとき現代の寓話の幕が、今あがる。
著者等紹介
伊坂幸太郎[イサカコウタロウ]
1971(昭和46)年千葉県生れ。’95(平成7)年東北大学法学部卒業。2000年『オーデュボンの祈り』で、新潮ミステリー倶楽部賞を受賞し、デビュー。’02年刊行の『ラッシュライフ』が各紙誌で絶賛され、好評を博す。’03年に発表した『重力ピエロ』は、ミステリファン以外の読者からも喝采をもって迎えられ、一気に読者層を広げた。また『重力ピエロ』で、七〇年代生れとしては、初の直木賞の候補となる。’04年に『チルドレン』、’05年には『グラスホッパー』が直木賞候補に。’04年『アヒルと鴨のコインロッカー』で吉川英治文学新人賞受賞。洒脱なユーモアと緻密な構成で読む者を唸らせ、近年希にみる資質の持ち主として注目を浴びている
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
1193
4つの物語とそれを外枠から囲むもう一つの物語。それぞれは別々の物語であり、それ自体には求心性はない。ただし、物語の空間は限定的であり、仙台がその舞台だ。しかも、駅前には「何か特別な日に」の垂れ幕とエッシャー展のポスターがある。ここが物語のいわば結節点だ。読者の興味はひとえにこれら一見バラバラの物語がどのように統合されていくのかにあるのだろう。そして、それは一応成功してはいる。ただし、これはミステリーではないものの、ミステリー的な意味では無理も多く、リアリティは大いに問題でもある。また、登場人物たちの⇒2017/12/21
サム・ミイラ
1016
短編のような長編。四つの物語は並走しながら絡み合いバラバラだった話も人物も全てが一つに収束していく様は本当に見事。これを推理小説と呼んでいいのか迷う処も伊坂幸太郎らしさと言えそう。内容的にはかなりグロい部分もあり、もはやブラックジョークを超越しているが彼が書くとどこかユーモラスでメルヘンチックで嫌悪感なく読めるのが不思議。着目すべきは時系列なようでさにあらずここにトリックを配している点。後のゴールデン・スランバーなどにも通じる伊坂幸太郎の世界がここにある。2014/08/05
HIRO1970
965
⭐️⭐️⭐️最近ハマりつつある伊坂さん。かなり綿密に練られたお話しで、5組のストーリーが変わる代わる交錯しながら多少時間を前後しつつ進行して行きますが、一体どんな結末なのか最後まで本当に分からず非常に楽しめました。様々な登場人物が時間と空間のある一点で交わる際に互いに影響し合い物語が展開する感じの印象が以前見ていたアメリカのテレビドラマのヒーローズに近い感覚がしました。同時代の映画、音楽、書籍、絵画等の様々な要素のエッセンスが垣間見れるのも伊坂作品の安定した楽しみだと思います。オススメです。2015/04/25
ehirano1
853
点と点が繋がるというよりも、独立した線と線が多次元で非幾何学的と思いきや幾何学的に交差していく様がとても興味深く楽しいです。果たして、交差によって出来上がったのはどんな幾何学模様なのか?しかし、それを説明するには余白が足りない、なんつってwww。2022/02/10
たる
666
仙台を舞台とした群像劇方式の小説。 それぞれの登場人物の好きな日本語を問う外国人の使い方(時間軸の答え合わせ)が秀逸だった。 前半にあれだけ放った伏線の数々をきちんと収斂していく。読んでいてにやりとしてしまった。 豊田が憧れたエッシャーの騙し絵の「壁によりかかり城の上を眺めている男」は、きっとその老犬なんだろう。未来を決めるのは人の交互作用だった。2015/11/02
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