内容説明
風に吹かれ、水に流され、偶然に身をゆだねる旅。そうやって“私”はマレー半島を経て、やっとインドに辿り着いた。カルカッタでは路上で突然物乞いに足首をつかまれ、ブッダガヤでは最下層の子供たちとの共同生活を体験した。ベナレスでは街中で日々演じられる生と死のドラマを眺め続けた。そんな日々を過ごすうちに、“私”は自分の中の何かから一つ、また一つと自由になっていくのだった。文字拡大増補新版。「あの旅をめぐるエッセイ」を新たに収録。
目次
第7章 神の子らの家―インド1
第8章 雨が私を眠らせる―カトマンズからの手紙
第9章 死の匂い―インド2
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ALATA
89
「まあ、これがインドっていうわけさ」物乞いの列、リキシャとの値段交渉、我が物顔で往来する白い牛。見るもの、触れるもの言葉が通じないのは当たり前だがガチガチの固定観念で生きる私には到底受け入れることは出来ない。まったく沢木さんの寛容性には驚かされる、胆力があって羨ましい。ただ、いろいろな人間関係がカースト制度で仕切られるところが深い★4※アシュラムで一緒になった此経さんとの対談もいい。「旅は道連れ余は情け」それにしても相棒に恵まれてますね。2025/02/20
ゆみのすけ
29
インド・ネパール編は一段と現地の熱気・空気が濃い!日本の大学生とともにインドの子供たちと過ごした日々。川の近くの焼き場で死体が焼かれるのを取り憑かれたように眺めている様子。インドの人々をかき分け寝床を確保し、密度の濃い車内を過ごした長距離列車。物価が安く金銭面では過ごしやすいが、だんだんと無気力になっていくネパールでの日々。そして、旅行中初めて体調を崩し、うなされ過ごした日々とそこでの出会いと優しさ。読むこちらも熱量高く、たっぷりどっぷり楽しめた。2024/09/15
chanvesa
26
ベナレスの死体焼場にたたずむ場面は印象的である。お話で聞く内容であるが、焼かれたり、不慮の死を遂げた人は焼かれずに川に流され、やがてカラスについばまれるという生き死にの凝縮された光景だ。沢木さんはこの後熱病にかかる。本当の病気であろうし、その光景から受ける衝撃が加速させた症状であるのかもしれない。ベナレスの宿の少年ニーランニャムに好印象を持つも下位カーストの少年に対して見せる軽蔑にがっかりするが、「カーストというものは絶対的な支配力があるらしく」(183頁)とあるように許されないが根の深さも感じさせる。2023/12/29
eiro
25
本棚の整理。若者バックパッカーのバイブル、文庫本インド・ネパール編。あれから都市部のインドは大きく変わった。インド旅行について他人からよく聞いたのは、インドは世界中旅行して最後の行くところだと。町の猥雑さや、見たことのない事象、人間たち。結構衝撃的だった。特に強烈なのはベナレスでの火葬だった。インドの旅はとてもハードだった。バックパッカーは貧乏自慢や、技術指南も多いが、著者は主張も何もないように感じた。著者本人が言ったように、彼は風のように旅をしていたのだ。旅行記の枠を超えて、読み物としてとても面白い。2023/09/16
GELC
20
ここまでの道中も十分に非日常体験だったが、やっぱりインドはレベルが違う。カースト、度を越した貧困、少女買春、薬物など、胸糞が悪くなるような話も多い。しかし、沢木先生、ここまでの約半年の道中で、一切の体調不良も起こさなかったとは…海外出張に行くたびに、程度は様々だが基本腹を壊している私から見れば、そもそも海外放浪に対する適性が高すぎるわ!2025/05/05