内容説明
大海原を制覇し、その優雅な姿は“七つの海の白い女王”と嘔われたシリウス号も今は海に浮かぶホテルとして第二の人生を送っていた。ところが折からの経営難で悪辣なギャングに買収されてしまう羽目に。しかし!シリウス号に集う心優しきアウトローどもが唯々諾々と従う筈はない。買収の当日、朝まだきの海を密かに船は出航した。謎の古地図に記された黄金の在り処を求めて…。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Tetchy
91
いやぁ、痛快、痛快。陸の冒険活劇から後半は海洋冒険活劇へ。海賊たちと戦い、未知の島で幻の鳥を発見し、宝の在処を示した島の形を手掛かりに船を進める。もうこれはまさに『ONE PIECE』そのものだ!最後の一行を読み終わった今、私の心はなんとも云えない堪らない気持ちでいっぱいだ。こんな気持ちのいい物語を書いた稲見氏がもう今はいないことが何とも堪らないのだ。癌を患った時、伏せてばかりはいけない、男は心に旗を掲げ、命燃え尽きるまで夢へと漕ぎ出せ。そう自身を鼓舞している作者の声がこの題名から聞こえてくるようだ。2018/06/26
yumiha
41
『カラスは飼えるか』(松原始)で、カラスが登場する作品として本書が紹介されていた。そのカラスは、『ソロモンの指輪』で有名なコクマルガラスで、名前もまんまのチョックで、その行動は、ローレンツ博士が述べた通り。しかも本書は稲見一良の生前最後の刊行作品。何歳になってもどこかに少年の尻尾をぶら下げた男の、その夢やロマンをたっぷり詰め込んだファンタジーだと思った。母親を模したような女人像の船首飾りをつけた船で、海賊と戦ったり、絶滅したとされる鳥たちを助けるとか、宝物さがしとか。きっと作者は楽しく書き進めただろう。2024/10/26
じゅむろりん
17
大富豪のプライベートヨットだったシリウス号は陸地に係留されたホテル。経営難につけ込まれ悪どい三星商事に買収されそうになるが、それを良しとしないキャプテンの安楽は気概ある仲間と共に船として復活させて、秘密の地図に示された宝島を目指して航海へ。ここ、日本ですよね?と言いたくなるファンタジックでノスタルジックな設定に、乗組員がとにかく個性的で魅力的。悪者は容赦なく叩き潰しスカッとさせてくれる。これはまさに童心をくすぐる大人の絵本です。もう終わり?勿体無い!もっと彼らの冒険を味わいたかった…。2023/08/16
タツ フカガワ
15
「わたしが書きたいと思うのは、ハルヲ・サトーのいう“根も葉もない嘘八百”だ。物語の中の男や女と一緒になって、ワクワクドキドキする小説だ」と言うのは作中の人物ブックさん。かつて“七つの海の白い女王”と呼ばれた客船シリウス号だが、いまは湾内で船上ホテルとして使われていた。そのシリウスを11人の仲間で再生し、宝探しの航海に出るという冒険譚。稲見さん、こんな小説も書くのかと嬉しくなった一冊で、痛快で提督が出てくるところなど、ちらっとクライブ・カッスラーのダーク・ピットを想起しました。2019/10/20
スズツキ
4
細かな部分に粗は残るが、心で感じよう! さすれば夢中で読める。まぁ終盤の某作戦にはさすがに賛同できなかったりするんだけどさ。2012/12/14