出版社内容情報
「私がカッターで切りました」。幼さを残す少女は動揺する大人を前に淡々と告げた。2004年長崎県佐世保市。小六の女児が白昼の校舎内で同級生の御手洗怜美さんを刺殺した。11歳――少年法すら適用されず人殺しの罪に問うことはできない。だが愛する者を奪われた事実は消えない。苦悩する被害者家族、償いきれない業火を背負った加害者家族……それぞれの心のひだを見つめたノンフィクション。
川名 壮志[カワナ ソウジ]
著・文・その他
内容説明
「私がカッターで切りました」。幼さを残す少女は動揺する大人を前に淡々と告げた。2004年長崎県佐世保市。小六の女児が白昼の校舎内で同級生の御手洗怜美さんを刺殺した。11歳―少年法すら適用されず人殺しの罪に問うことはできない。だが愛する者を奪われた事実は消えない。苦悩する被害者家族、償いきれない業火を背負った加害者家族…それぞれの心のひだを見つめたノンフィクション。
目次
第1部(1本の電話;僕は新聞記者;昼日中の教室で;抱き上げてやれなかった;加害少女は ほか)
第2部(御手洗さん/被害者の父として;加害者の父として;被害者の兄として)
著者等紹介
川名壮志[カワナソウジ]
1975(昭和50)年、長野県生れ。2001(平成13)年、早稲田大学卒業後、毎日新聞社に入社。初任地の長崎県佐世保支局で小六女児同級生殺害事件に遭遇する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
141
2004年に発生した 佐世保小6同級生殺人事件を追ったルポである。身近な人の娘が殺害された著者の筆は重い。毎日新聞記者だった著者は 何を思い、取材を続けたのか… 償いとは何なのか… 被害者と加害者の親たちの心が痛い。 誰かを憎むのではなく、再生を願う、祈りにも似た、ルポだった。 2022/02/15
taiko
75
2004年に佐世保市で起きた、小学6年生女児による殺人事件。 被害者遺族の少女の父の、当時の部下が書いたルポタージュ。 事件のことは覚えていましたが、報道で見ていただけなので、改めてネットで調べてからこちらを手に取りました。嫌だなと思う相手に対して、いなくなればいいと思ってしまうことは、少なくないと思います。でもそこから、相手を殺める行為につながってしまい、それがたった11歳の少女の行為だったという衝撃。少年法でも裁けなかったこの事件の真実を複雑な気持ちで読み進めました。残された人達が、→続く2019/11/05
佐島楓
69
まだ自我が成熟しきらなくても、取り返しのつくこととつかないことの区別はつく子のほうが多いと思う。もし加害者の少女が本当に発達障害だったとしても、それを即犯行に結び付けるわけにもいかない。気づいてあげられなかった大人の責任は、どうしようもなく存在するからである。また、少女がある暴力的な映画を偏愛していたようだとあるが、そのようなコンテンツを供給するクリエイターの責任というものもやはり存在する。少なくとも大人が子どもの眼に触れさせたくないものを遠ざける努力はしなければいけない。年々困難になっていくことだが。2018/06/02
007 kazu
50
2004年佐世保市で起きた校内での同級生による小6女児の殺害事件。第一部、筆者はその父親の部下の新聞記者で被害女児とは一緒に食卓を囲んだこともあり、半当事者の立場からこの事件を描写する。上司から「怜美が死んだらしい」との報告を受ける事件が起きた直後の臨場感に当事者の顔を持ちながら新聞記者の職務も求められる著者の苦しみ、 読むだけで動悸が早くなる。定期で報道陣向けに出される娘への思いをつづった父親の手記も落涙を避けられない。第二部は時を経て、元上司で被害女児の父親、兄、加害女児の父親をインタビュー(続く) 2019/08/13
読特
43
被害女児の父は3年前に妻を亡くし男手1つの子育て中での事件発生。加害者家族の立場も慮り、怒りのぶつけどころもなく、やるせない。 加害女児の父は娘が生まれた直後に脳梗塞。不自由ながらもつましい生活を営み子育てをしてきた。 責任を重く受け止め、読まれない被害者父への手紙を書き続ける。 事件報道の問題も突きつけられる。憶測で先走る記事。構図を単純化する解説。そんな報道を喜ぶ人がいる。しかし、それが当事者たちをどれほど傷つけるか。一旦知ろうとするならば、当事者とともに悩み、苦しむ覚悟が必要であると感じる。2019/12/24