感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あかつや
5
生まれてすぐに捨てられた雑種犬は作家の家に拾われて、ドン松五郎と名付けられる。賢い彼は成長するとともに耳学問で人間界の知識を身に着け、犬のリーダーとなっていく。簡単に言うと『吾輩は猫である』の犬版。ただこいつは人間にチクリどころじゃなく物申してくる。話していると調子に乗って話がどんどん脱線していくのが面白い。でも漱石の猫は別に彼自身が夏目漱石って感じしないけど、このドン松五郎はものすごく=井上ひさしって感じなんだよなあ。だからちょっと偉そうに喋ってたりすると、でも君、雌犬にDVしそうだよねって思っちゃう。2021/07/24
ゆきのすけ
5
再読。前回に読んだときと同じく、最後の終わり方がなんだか残念。寂しい。連載が急に打ち切られることになったんじゃないか、と思ってしまうほど唐突で。犬目線で見る人間は見栄っ張りで、感情的で、自己中心的で、ほんとうは犬の方が知能は上なんじゃないか、と思えて来る。「おれたち犬が仕合せになるには、まず人間が仕合せにならなくてはならぬ」とのことなので、犬のためにも仕合せになりましょう、私たちから。2012/10/05
英樹
2
井上ひさしさんならではのユーモラス溢れる作品だった。読後、街で見かける犬を見ると意識してしまい緊張した(笑)最後、ドン松五郎の意識が薄れていくくだりはちょっと悲しかった。自分的にはもとの松沢家に戻って普通の生活をして物語りが終わってほしかったが作者の意図があるのでこれはこれで良いのだろう。とにかく作者自身が犬と言う媒体をとうしての風刺批判なりがとても伝わってきた。この作品を書く時、着ぐるみでも着ながら書いたのかもしれない。2011/07/10
Kazuyo
1
吾輩は猫であるのパロディ的な人間の言語や知識をふんだんに持つ犬の軽妙な話。子供の頃見た映画では可愛く賢い犬が大活躍!みたいな印象だったけど、小説は人間や社会へ批判たっぷりで、出てくる犬達はやたら高知能・高技能だし、全ての犬がこんなことを考えながら暮らしていたら、人間としてどう生きてよいものやらと恐ろしくなります。壮大な計画が発展しそうな中盤部に期待大だっただけに、ラストの唐突さは残念。書くのが面倒になってしまったのかしらと思えるほど。2013/10/07
ケンチャン
1
犬を主人公にしたユーモア小説。人間に負けないぐらいの知能を持った犬たちが、自分達の目的達成のために結束して立ち上がる。所々に現実にはありえない描写があるが、娯楽作品であり充分許容できる。実際に犬が飼育されるために、バカを演じているのだとしたら、空恐ろしい。2011/07/30