内容説明
1961年、俳優としてヨーロッパに長期滞在した著者は、語学力と幅広い教養を武器に、当地での見聞を洒脱な文体で綴り始めた。上質のユーモアと、見識という名の背骨を通した文章は、戦後日本に初めて登場した本格的な「エッセイ」だった。
目次
わたくしの職業
これは本当に映画だろうか
ハリーの話
ジャギュアの到着
白鳥の湖
大英帝国の説得力
想像力
旅馴れてニタリと笑う
マドリッドの北京
ニックとチャック〔ほか〕
著者等紹介
伊丹十三[イタミジュウゾウ]
1933(昭和8)年映画監督伊丹万作の長男として京都に生まれる。映画俳優、デザイナー、エッセイスト、後に映画監督。TV番組、TVCMの名作にも数多く関わり、精神分析がテーマの雑誌「モノンクル」の編集長も務めた。翻訳者としての仕事もあり、料理の腕も一級だった。映画「お葬式」発表以降は映画監督が本業に。数々のヒット作を送り出した後、’97(平成9)年12月没
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
115
読み友さんのレビューを見て読みました。「お葬式」「マルサの女」の映画監督のイメージがあるが、この本が出版された1960年代にヨーロッパで俳優をして生活していたとは知りませんでした。サラッと述べている内容がなんとも粋で外連味がない。まだ日本人が少なかった時代に精一杯の背伸びをして欧州の名優たちと役を張っていた姿が透けて見えます。実体験や見聞きしたエピソードがどれも日本では味わえないものばかり。大江健三郎や三船敏郎との交友も興味深かったです。表紙のイラストも本文の挿絵も筆者のもの。多才な方だったのですね。2024/10/08
ゴンゾウ@新潮部
115
60年代に俳優としてヨーロッパに長期滞在した伊丹十三さんのエッセイ。帯に「随筆」を「エッセイ」に変えたと紹介されていた。海外渡航がまだまだ一般的でなかった時代に歯に衣着せぬ言葉で東西の文化を語っている。当時としてはきっと斬新だったに違いない。高慢でありながらもインテリジェンスを感じる文章に才能を感じる。【新潮文庫の100冊 2018】2018/07/08
優希
115
面白かったです。お洒落でユーモアとウィットの利いた文章に思わずニヤリとしました。ヨーロッパに長期滞在したときの見聞がつづられていますが、凄く観察眼があるなと思います。50年以上も前なのに古さを感じさせず、あか抜けていて、今の時代でも十分に楽しめますね。2016/03/16
ふじさん
96
懐かしい本を令和の時代に再読することが出来た。山口瞳が、「男性的で繊細で真面な人間がこの世に生きられるか」と心配ぎみに語った伊丹十三。彼がまだ俳優として活躍してた頃に書かれた上質なユ-モアと高い見識で書かれたエッセイ集。若かりし頃の彼のちょっと青臭い日本人や日本文化に対する思いがなつかしい。今の混沌とした日本を予測したかのような内容が多く、おおいにヒントとなる記述が多い。若い人々にも読んでほしい一冊。 2021/08/14
seacalf
95
好き嫌いどうあれ、いちど読んでおきたかった本。賛否両論あるだろうが、己が信ずるダンディズムを自由に語るこの小気味良さ。古めかしくも魅力的な舶来話の数々は、次に何が出てくるのかわくわくする大人のおもちゃ箱のよう。電車の中でついニヤニヤして訝しい視線を感じるが気にしない。今これを誰かが書いたら嫌味ったらしく感じるのだけれど、時代が重なると優しい眼差しで楽しく読める。断然面白いしね。映画館ですらノータイで入れなかった時代、日常に風雅があった時代の話。色々と面白い話が飛び出す。肩肘張らずに読める一冊。2017/12/11