内容説明
7500万円の横領金を資本に、銀座のママに転身したベテラン女子行員、原口元子。店のホステス波子のパトロンである産婦人科病院長楢林に目をつけた元子は、元愛人の婦長を抱きこんで隠し預金を調べあげ、5000万円を出させるのに成功する。次に彼女は、医大専門予備校の理事長橋田を利用するため、その誘いに応じるが…。夜の紳士たちを獲物に、彼女の欲望はさらにひろがってゆく。
著者等紹介
松本清張[マツモトセイチョウ]
1909‐1992。小倉市(現・北九州市小倉北区)生れ。給仕、印刷工など種々の職を経て朝日新聞西部本社に入社。41歳で懸賞小説に応募、入選した『西郷札』が直木賞候補となり、1953(昭和28)年、『或る「小倉日記」伝』で芥川賞受賞。’58年の『点と線』は推理小説界に“社会派”の新風を生む。生涯を通じて旺盛な創作活動を展開し、その守備範囲は古代から現代まで多岐に亘った(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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納間田 圭
150
彼女の切り札は○○情報満載の黒い手帖。「私の出した交換条件、呑んでいただけるのですか?」横領を働いたベテラン行員と対する銀行側。彼女が逮捕されれば…その架空名義預金者リストは世に出ることになる。マスコミも黙っちゃいない。困るのは…信用丸潰れの銀行。金融庁に厳重指導を受けることになるし、支店長次長は左遷か降格当然。それから莫大な追徴課税を取られる金持ち達もいる。で…せしめた7500万を元手に手に入れた夢だったお店。名前は”クラブ カルネ”…フランス語で手帖という意味。銀座一等地の新築ビル3階13坪でオープン2022/01/23
miyumiyu
116
読んだのは随分昔だが、武井咲のドラマを見てるので再読したくなった。やっぱり松本清張はおもしろい!体の関係を持たずに男から大金を騙し取る原口元子。敵を作ってでも強欲でしたたかな駆け引きに、嫌悪感よりも先が気になってページをめくる手が止まらない。時代の古さも気にならない。何回ドラマになってもおもしろい。急いで下巻へ。2017/08/21
ゴンゾウ@新潮部
103
女性は恐ろしい。男性の弱味につけこんで次々にお金を巻き上げていく。 普通の銀行員の女性がこんなに悪女に変身できるのだろうか。それも一筋縄ではいかない男達を窮地に追い込んでいく。清張氏の緻密な取材力に脱帽です。2015/07/12
エドワード
96
テレビドラマ放送中。銀座のクラブは別世界である。恐らく一生縁がない。元銀行員が横領した金で銀座で名を上げる下剋上物語、男を手玉に取ってどこまで成り上がるか。今でもこんなに脱税するんだ、とまず驚く。原作は80年代色が濃厚、映画「マルサの女」と同じ頃だ。架空口座が容易に作れた時代、30代の元子が中年、50代の楢林や橋田が初老のハゲ親父なのに苦笑。今や指紋認証などのIT化やオレオレ詐欺対策など、技術も設備も隔世の感があるが、銀行側が大口預金者に借名口座を用意するとは恐れ入る。欲望は不変ということか。下巻へ続く。2017/08/13
Atsushi
94
脱税目的の架空預金口座から7,568万円を横領し銀行員から銀座のママに転身した原口元子。店の上客である産婦人科病院長楢林を脱税のスキャンダルをネタに恐喝し5,000万円の現金を手に入れる。下巻で元子がどういう結末を迎えるのか楽しみだ。女は逞しく男は情けない「はづかしきもの、色このむ男の心の内」。2018/07/01
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