出版社内容情報
人が生きている意味ってなんだ? 戦火の下で聞こえる歌声が答えてくれる。
ビルマの戦線で英軍の捕虜になった日本軍の兵隊たちにもやがて帰る日がきた。が、ただひとり帰らぬ兵士があった。なぜか彼は、ただ無言のうちに思い出の竪琴をとりあげ、戦友たちがが合唱している“はにゅうの宿”の伴奏をはげしくかき鳴らすのであった。戦場を流れる兵隊たちの歌声に、国境を越えた人類愛への願いを込めた本書は、戦後の荒廃した人々の心の糧となった。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kaizen@名古屋de朝活読書会
209
新潮百冊】何十年ぶりかに読みました。何度読んでも、違う深みに気が付きます。ビルマの竪琴ができるまで、あとがき、中村光夫の解説、平川祐弘の「ビルマの竪琴」余聞、牛村圭の注解、楽譜集。主人公と著者のそれぞれの立場、イギリス、ビルマ(ミャンマー)のいろいろな人達、仏教、音楽。洞窟のようにあちこちに伸びる深み。2014/07/13
yoshida
185
【戦後70周年~しっかりと読みたい戦争と平和の本】イベントにて読了。本書を読む前に映画を観た。子供の頃に観ましたが、再び考えさせられ、泣かされました。本書はフィクションですが、敗戦後間も無く、「戦った人はたれもかれも悪人である」という風潮の中で鎮魂の書を出版できた事は偉大な事と感じた。モデルは悪名高い牟田口司令官のインパール作戦。主人公の水島上等兵は先行する原隊を追い白骨街道を進む。苦悩の末、日本兵の埋葬、供養のためビルマに残る決心をする。戦後も自分の名誉の為に動いた牟田口司令官は本書をどう捉えたろう。2015/08/23
真香@ゆるゆるペース
153
再読。太平洋戦争敗戦前後のビルマ(現・ミャンマー)を舞台にした、不朽の名作。音楽学校出身の隊長が率いる日本軍部隊に所属していた水島上等兵の竪琴を伴奏に、隊長の指揮で隊員たちは合唱を楽しみ、音楽の力でいくつもの戦局を乗り越えていくが、ある任務に従事したあと水島上等兵は帰ってこなくて… 時にはミステリー、時にはシリアス、時にはコミカルといろんな要素があり、反戦だけでなく人の優しさや思いやりが伝わってくる心温まるお話。「おーい、水島、一しょに日本に帰ろう!」のシーンは、目頭が熱くならずにはいられない。2021/08/11
新地学@児童書病発動中
142
この本を読みながら、母方の祖父のことを考えていた。フィリピンに出征して、そこで亡くなり、遺骨は帰ってこなかった。祖母はそのことが、本当に悲しかったようだ。夜中に物音がすると、「じいちゃんが帰ってきた」と言うことがあった。この物語の中で、水島と呼ばれる兵士は戦争が終わった後に、ビルマにとどまることを決意する。その地で亡くなった日本人を弔うためだ。物語とはいえ、私は水島の決意が嬉しかった。異国で命を落とした祖父の鎮魂になると思ったからだ。平和に対する作者の祈りが、まっすぐに伝わってくる素晴らしい小説。2017/08/01
優希
130
子供向けに書かれた作品ながら胸に訴えるものがありました。戦争と生きる意味への問いかけと、答えるように聞こえる歌。ビルマで行方不明になった1人の青年兵と、よく似た僧侶。彼こそ行方不明になっていた水島でしたが、戦地の弔いのために生きる道を選ぶのに切なさを感じます。竪琴と共に流れる『はにゅうの宿』に大切な想いが込められていると思わずにはいられませんでした。童話とはいえ、忘れてはならないことが織り込まれているからこそ響くものがあります。2016/07/27