出版社内容情報
昭和の終わり、南河内に暮らす一族の娘に縁談が持ち上がる。女性は25歳までにと見合い結婚する者も多い時代。本人の考えを他所(よそ)に、結納金や世間体を巡り親戚中の思惑が忙(せわ)しくぶつかり合う。その喧噪を、分家に暮らす4歳の奈々子はじっと見つめていた――「家」がもたらす奇妙なせめぎ合いを豊かに描き、新人らしからぬ力量と選委員が絶賛、三島由紀夫賞&新潮新人賞ダブル受賞のデビュー作。
内容説明
昭和の終わり、南河内に暮らす一族の娘に縁談が持ち上がる。女性は25歳までにと見合い結婚する者も多い時代。本人の考えを他所に、結納金や世間体を巡り親戚中の思惑が忙しくぶつかり合う。その喧噪を分家に暮らす4歳の奈々子はじっと見つめていた―「家」がもたらす奇妙なせめぎ合いを豊かに描き、新人らしからぬ力量と選考委員が絶賛、三島由紀夫賞&新潮新人賞ダブル受賞のデビュー作。
著者等紹介
三国美千子[ミクニミチコ]
1978(昭和53)年、大阪府生れ。近畿大学大学院文芸学研究科修了。2018(平成30)年「いかれころ」で新潮新人賞受賞、’19(令和元)年同作で三島由紀夫賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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なゆ
69
なんか、懐かしい。好きな感じ。祖母がいなくなった途端、シュワシュワと消えた(ように思えた)我が家の里の様子にそっくりなんだ。本家、分家、濃密な親戚付き合い、その中で交わされる女たちの密やかな会話。意味がわからないながらも聞いている、4歳のなこたんの頭の中には、ヨウシ、カイホウ、アカ、セイシンなどの仄暗い単語が積み上がる。心を病んでいる叔母の縁談にまつわる一連の経緯が、幼い心に印象的に映る。そして“分家”をずっしりと背負わされた母久美子の、不安定な感情も。「ほんま私は、いかれころや」ピンクのぺろぺろって何?2022/07/27
優希
43
家のせめぎ合いなのでしょうか。わかったようなわからないような、曖昧な感情になりました。2022/08/01
練りようかん
31
昭和58年、河内の農家には身分というものが残っていた。会話の断片は4歳の私にとって解らぬことが沢山。本家と分家、声を顰める唯一の恋愛結婚、婿養子。聞き返しと答えのやりとりで感じ取れてしまう世界観の構築が上手く、序盤から引き込まれた。登場人物が多く現在の私による回想補足が助かるのとドキッとするので忙しい。差別がどこからやってくるのかを着実にあらわす筆力、属性ではなく大半を名前で記す意図も深読みさせて魅力的。読後も脳内で彼女達の物語が続く面白さだった。著者の言語化センスが好きだ。町田氏の解説も良かった。2025/06/15
harupon
21
デビュー作。三島由紀夫賞&新潮新人賞。昭和58年杉崎家の次女志保子の縁談話が持ち上がる。長女久美子の娘・奈々子4歳からみた河内の代々の農家「杉崎家」を回想して物語っている。血筋とか養子とか本家、分家。なんかいや~になるなぁ。こういう名家に生まれたらめんどくさいな。 2024/02/14
駄目男
20
新潮新人賞&三島由紀夫賞ダブル受賞のデビュー作。 昭和58年に四歳だった女の子「奈々子」から見た南河内に暮らす代々の農家一族「杉崎家」を現在から回想して書いている作品で、二十四歳の娘に縁談が持ち上り、女性は二五までに見合い結婚する者も多い時代。本人の考えを他所に、結納金や世間体を巡り親戚中の思惑が忙しくぶつかり合う。分家に暮らす四歳の菜々子はその喧噪をじっと見つめている様子だが、まるで一族のドキュメンタリーを小説にしたような作品で、一般家庭の日常会話をそのまま描写している味わい深いものでいい小説だ。2022/12/31




