出版社内容情報
有罪率99.9%という歪な司法制度に敢然と異を唱え、無実の人々に寄り添うことに自らの生のすべてを捧げている男がいる。放火の罪を着せられた被告のために大規模な火災実験を行い、痴漢事件では零コンマの単位で車載カメラの画像を鑑定し、小さな可能性に懸ける――。変人と呼ばれることを恐れず、異例の数の無罪判決を執念で積み上げ続ける孤高の弁護士に密着した鮮烈なノンフィクション。
内容説明
有罪率99.9%という歪な司法制度に敢然と異を唱え、無実の人々に寄り添うことに自らの生のすべてを捧げている男がいる。放火の罪を着せられた被告のために大規模な火災実験を行い、痴漢事件では零コンマの単位で車載カメラの画像を鑑定し、小さな可能性に懸ける―。変人と呼ばれることを恐れず、異例の数の無罪判決を執念で積み上げ続ける孤高の弁護士に密着した鮮烈なノンフィクション。
目次
序章 破滅
第1章 何者
第2章 暗闘
第3章 毒
第4章 心
第5章 壁
第6章 立証
第7章 不屈
終章 理由
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
hatayan
41
著者は『辞書になった男』などを著したNHKのディレクター。一度起訴されると99.9%の確率で有罪になる司法制度にあって、冤罪事件を無罪に持ち込む弁護士・今村核の半生。採算を度外視して放火や痴漢のあった当日の状況を再現して、検察の主張の矛盾を明らかに。知識として法律を知っているだけでは冤罪弁護では勝てず、雑学をもって科学的にものを見る姿勢が大切といいます。後半では、東大に入学するも生き方に自信が持てず、エリートだった父親との間にわだかまりを残して、苦悩の末冤罪弁護に存在意義を見いだすまでが描かれます。2021/05/14
cao-rin
22
冤罪弁護を「私が生きる理由、そのものです」と言う今村核弁護士。有罪率99.9%という日本の刑事裁判の現実の壁に、文字通り人生を賭けて挑む姿に何度も胸が熱くなった。彼の無実の立証のやり方は、彼の生き様そのものだ。詰将棋にも例えられるように、粘着質でしつこい。命をすり減らし、犠牲にしてでも冤罪弁護に取り組む今村弁護士の存在は、腐った日本の刑事司法の闇に射す一筋の光だと思う。まさに‘’信念の人”と言える。この本に出会えて良かった。今村弁護士の活動がもっと世の中に周知されますように。2021/05/22
寝落ち6段
18
冤罪はあってはならない。冤罪は、捜査や裁判の過程に致命的な誤りがあるから発生する。もし、冤罪が暴かれ、無罪判決を受けたとしても、冤罪被害者の人生は破壊され、もう決して元には戻らないだけではなく、より悪化することが多いようだ。冤罪被害者を救う仕組み、冤罪が発生した際の裁判の検証と責任の所在の明確化、そして、冤罪を暴く弁護士に十分な補助金を支給する制度の設置が必要だ。直接関わらない限り、冤罪事件の途中とその後を知ることはできない。決して、冤罪だ万歳解決だとはならない、後味の悪さが残る。2025/05/04
lily
16
無罪件数14件。有罪率99.9%の歪な刑事司法に敢然と立ち向かう今村核氏を追ったノンフィクション。冤罪弁護は無罪になったとき刑事補償金が若干出るだけの無償労働で弁護士のほとんどは敬遠する。実入りの少ないこの分野で、世間で知られていない小さな事件に執念を燃やし立証を積み重ねていく姿勢は、求道者のそれである。その姿に頭が下がるが、彼が立ち向かうのは一つ一つの事件を通じて現れる刑事司法の構造全体。検察官であっても裁判官であったも弁護士であっても、「起訴した事件が無罪である可能性」に思いを致らすべき。名著。2022/05/17
YONDA
15
今村弁護士の活動は大きく報道されることはないが、冤罪を勝ち取るためになんと途方もない労力が必要なのか。冤罪弁護だけでは食っていけないのはその通りだ。無罪を得ても喜ばず怒りが先行する今村弁護士。そして日本の裁判制度のなんと怖いことか。「疑わしきは被告人の利益に」なんて言葉は、日本の裁判制度には存在しない。有罪ありきの裁判って誰のための裁判なんだろう。今村弁護士には今後も身体を壊さないように頑張ってほしい。Nスペ見ていないのでちょっと見てきます。2021/05/17
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- 和書
- 幻想文学 〈第57号〉