内容説明
老中・水野忠邦の改革が始まり、苛烈な奢侈取り締まりで江戸庶民たちの心も暮らしも冷え切っていた。幼なじみの小夜と所帯を持ったばかりの蒔絵職人・孝太も、すっかり仕事が途絶え、苦しんでいる。そこへしばらく連絡もなかった幼い頃の友達が、ご禁制の仕事を持ち込んできた―。切ないほどの愛、友情、そして人情。長塚節文学賞短編小説部門大賞を受賞した表題作『しずり雪』ほか、三編を収録。珠玉の時代小説はどれをとっても人生の哀感に心が震える。
著者等紹介
安住洋子[アズミヨウコ]
1958年兵庫県尼崎市生まれ、大阪府枚方市で育つ。大阪信愛女学院短期大学卒業。学習塾で国語科教材作成に携わりながら小説を書き出す。1999年、『しずり雪』が第三回長塚節文学賞短編小説部門大賞を受賞。2004年3月短編集『しずり雪』(小学館刊)でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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いつでも母さん
89
【しずり雪】・・木の枝などに降り積もった雪が滑り落ちること。作次が、作次が・・不覚にもはラストで落涙。つらいなぁ。タイトルが秀逸。多分、安住作家初読み。短編4作。読ませますね~ちょっと嵌りそうです。2015/12/05
財布にジャック
72
初めての作家さんなので、全く期待せずに真っ白な気持ちで読んだせいか、す~っと物語の中に入って行けて、とても良い時間を過ごさせていただきました。江戸時代の人々の正直さ、優しさ、強さが随所に感じられて、短編も中編もどの話も甲乙付けがたく、読み終わってしまうのが惜しい程でした。この本は、大輪の花のように一際目立つことはなくとも、道端にひっそりと咲いている花を見つけた時の嬉しさに似た何かを感じさせます。2012/09/27
はつばあば
48
初夏を思わせる五月の初日。安住洋子さん初読みに感謝。「しずり雪」の作次が心の悲鳴をうすら笑いで隠す哀しさと、命がけで守った友への真実。「昇り竜」では、ろくでなしの父親の娘に対する想い。そして各編に登場する友五郎親分の粋と配慮。「城沼の風」も辻斬りは祐真かと思わせるドキドキ感。全編とも人生の光と闇に、自分の生き様が問われている。周五郎さんよりは軽め。周平さんに負けない内容でした。あと二冊、追っかけてみます。殺伐としてきた現代に、貧しさに負けない昔の子供達が安らぎを与えてくれます。2015/05/01
ひさか
36
2004年4月小学館刊。2007年1月小学館文庫化。しずり雪、寒月冴える、昇り龍、城沼の風、の4篇。いずれも岡っ引の友五郎が登場し、謎と人情が織り込まれた展開は秀逸で、楽しめる。昇り龍と城沼の風は、サスペンスフルでわくわくしました。アンソロジーで、知った安住さんでしたが、他の作品も読みたくなりました。2021/06/13
ちょるる
32
安住洋子さんのデビュー作。4つの連作短編集。2年以上前「夜半の綺羅星」で友五郎親分を知り、ずっと読みたいと思っていたのだが…やっと読む事が出来た。4編全てとても良かった。4編全て友五郎親分登場。「しずり雪」の友情に、「昇り龍」「城沼の風」の父親が子を思う気持ちに、じわじわ感動が押し寄せてきた。もう少し安住作品を読みたいと思う。2017/12/15