出版社内容情報
中学1年生のクラスメート、めぐみとかすみは、同い年で同じ誕生日。赤の他人なのに従姉妹と見間違えられるほど似ていた二人は、自然と「親友」になっていく……。文豪・川端康成の幻の少女小説が今、鮮やかに蘇る。
内容説明
めぐみとかすみは新制中学一年のクラスメート。赤の他人ながら瓜二つ、誕生日も同じとあって親しくなっていく。鵠沼での夏休み、上級生・容子への憧れや嫉妬。微妙にすれ違っていく友情の行方は?日本人初のノーベル文学賞受賞作家・川端康成による幻の少女小説。昭和二十九年から月刊誌『女学生の友』に連載された貴重な秀作が蘇ります。玉井徳太郎による連載当時のイラストも多数収録。また川端が戦前に『セウガク一年生』に寄稿した短編「樅ノ木ノ話」も当時の誌面のまま収載しています。解説は娘婿の川端香男里氏と、生前の著者と親交のあった瀬戸内寂聴氏。
著者等紹介
川端康成[カワバタヤスナリ]
1899年大阪府生まれ。東京帝国大学在籍中、『新思潮』に発表した「招魂祭一景」が菊池寛に認められ、文壇に進出。その後、横光利一らと『文芸時代』を創刊し、新感覚派の作家として注目される。代表作に「伊豆の踊子」「雪国」「古都」など。1948年日本ペンクラブ会長に就任。61年文化勲章、68年日本人初のノーベル文学賞を受賞。72年逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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mocha
100
昭和29年から「女学生之友」に連載された幻の少女小説。瓜ふたつのめぐみとかすみの友情が華麗な筆致で描かれる。ピアノのある家やカゴに入れたサンドイッチとか西洋犬とか当時はきっと女の子の憧れだったんだろうな。玉井徳太郎氏の挿絵がたくさん使われているのも嬉しい。少女にしては妖艶だけど当時のお洒落が伝わってくる。併録「樅ノ木ノ話」カタカナばかりのお話を小学1年生が読んでたと思うととても不思議。瀬戸内寂聴さんの解説はほぼあらすじと自分の話。間違ってるところもあったりでなんだか心配になった。2018/03/07
佐島楓
64
終戦後に川端が「女学生の友」に連載した小説。繊細で美しい文章に、ときどき混じる暗さや冷やっとするところが、やはり川端である。かすみの孤独とわがままは、幼いころの自分に重なるところがあって胸が痛んだ。この頃の少女雑誌を読んでいた世代がうらやましい。2017/08/16
えりか
52
少女向け月刊誌「女学生の友」に連載されていた少女小説。同じ誕生日で双子のように似ている、かすみとめぐみの友情物語。嫉妬と亀裂、少しのスリル、かっこいいお姉さま登場、家族と友人の優しさ。当時は女の子たちは肩を並べて読んでいたのだろう、ああなる、こうなる、なんて展開を予想していたのだろう。楽しみながら読んでいる姿が目に浮かぶ。「わたしたちもかすみとめぐみのような親友でいましょう」なんて言い合っていたのだろう。物語を楽しみ、当時読んでいた少女たちの様子を想像して楽しみ、二重に楽しめた。玉井徳太郎の挿し絵が素敵。2017/08/16
syaori
51
川端の少女小説。生まれた日が同じで容姿も似ている、二輪のチューリップのようなめぐみとかすみを中心に、少女たちの友情、わがまま、親や周囲へのちょっとしたわだかまり、かわいらしい嫉妬など、思春期の曖昧な一時期の心情が繊細に描かれていてうっとりします。自分の少女時代はこんなに美しいものではなかったのですが、自分の心の奥に残っている少女時代、その理想を刺激されました。表紙にもなっている玉井徳太郎の挿絵がまた素敵で、登場人物の魅力を違った角度で伝えてくれて、挿絵と文章が互いに支え合って紡ぐ可憐な世界を堪能しました。2018/08/03
にゃおんある
32
おみきどっくりの二人。戦後にトレースされた友情の、少女向けのお話。されども、センテンスとコンテキストは、たどたどしい美しさを放つから、流石だなと思いながら引き込まれてしまった。質の良いワインのような酔いが回る。洒落たアンティークみたいな品の良さ。もつれた紐が解けていく心地よさと新しい試練の憂いが来て、成長していくのだな、と思う。もう、自分には遅巻きすぎるけど、清々しい気分になれる。どこへ行っても、何年経とうとも、いつまでもポラリスを見失わないようにしたい。2018/08/30




