中国と茶碗と日本と

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中国と茶碗と日本と

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  • サイズ B6判/ページ数 301p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784093882583
  • NDC分類 751.2
  • Cコード C0095

出版社内容情報

若き中国人研究者が読みとく日本文化の死角

新進気鋭の中国人研究者による、斬新な日本文化論。四川省出身の著者・彭丹氏は、四川大学で日本文学を学び、中国西南航空公司勤務を経て日本留学。中国の航空会社に勤務した後、日本に留学。現在は法政大学講師。来日以来、疑問に思ってきたことは、中国では廃れた文化が日本に残っていることだった。それを最も意識したのが、茶の湯の茶道具であった。茶の湯で珍重される茶碗のほとんどが唐物(中国製)で、しかも国宝茶碗もほとんどが唐物である。日本の国宝であるはずなのに。しかも不思議なことには、産地・中国にはそれらの茶碗は何ひとつ残っていないのだ。なぜ日本の茶人は唐物を珍重したのか。なぜそれらが中国に残っていないのか。そこに見え隠れする、「借用」と「創造」という、日本文化の本質。それを解きあかしていくのが、本書である。日本人だからこそ気づかない、日本文化に潜む中国文化の影。中国人の視点から、茶の湯、そして国宝という、日本文化の美意識の聖域に踏み込んだ、まったく新しい比較文化論の誕生である。

【編集担当からのおすすめ情報】
日本文化とは何か、日本人はどういう民族か、といったことに興味ある方なら、陶磁のことがわからなくても思わずうなずきながら読んでしまう、目からウロコの日本文化論です。とても読みやすく、中国人とは思えぬほどの日本語文章のうまさにも脱帽です。

はじめに──「日本」の中にある「中国」


第一章 青磁茶碗の謎

一 中国青磁の原点、越州窯青磁がやって来た
青磁はつまり碧玉/陸羽茶道が青磁茶碗を生んだ/遣唐使・永忠、嵯峨天皇に茶を献ずる/
平安貴族があこがれた青磁茶碗
二 茶人に重宝された「砧青磁」
馬蝗絆茶碗の謎/誰が砧を持ってきたか?/四川禅僧蘭渓道隆、日本に渡る
三 「珠光青磁」と侘び
茶の湯の「侘び」と、陸羽茶道の「倹」/誰が珠光青磁を持ってきたか?/
茶の湯における唐物崇拝/村田珠光の斬新さ
四 青磁茶碗の名付けと格付け
七官青磁の名の由来/風変わりな名称をつける日本人

第二章 天目茶碗の謎

一 日本人はそれを「曜変天目」と名付けた
天目茶碗の誕生/宋代に流行った天目茶碗/宋代の茶は白、茶碗は黒/窯変への恐れ/
絶対的な存在、「天」/抹殺された窯変天目/ 「窯変」から「曜変」へ
二 玳皮天目の運命
宋代文人に黙殺された玳皮天目/平淡を好む文人趣味/玳皮天目は派手すぎる/
日本で珍重された玳皮天目/茶のための茶碗か、茶碗のための茶か
三 油滴天目と禾目天目の流転
泡茶法の登場/不要となった天目茶碗が渡来する/油滴と禾目が茶人に重宝された理由/
中国文化と日本文化の異質性/憧憬と対抗意識

第三章 祥瑞茶碗の謎

一 祥瑞の誕生
染付磁器の始まり/世界を席巻した明の染付磁器/茶人と染付磁器/染付茶碗、茶会に現わる/
遠州流茶の湯の登場/新たな茶の湯には、新たな茶碗を/五良大甫五祥瑞造の銘の謎
二 五良大甫と祥瑞の不可思議な関係
日本人陶工説/中国人陶工説/焼造磁器を推定する/染付磁器は「いき」の器/
江戸時代の中国趣味/ヨーロッパのシノワズリ/「五良大甫呉祥瑞造」銘の謎を解く/
焼造場所を推定する/何が本物で、何が偽物か

第四章 龍文の謎

一 中日両国で異なる、龍の存在意義
龍は中国のトーテム/中国皇帝の象徴として/中国龍、日本に渡る/
日本の天皇は龍をどう見たか/龍は水神

二 陶磁器における龍文の中日比較
日本における製陶の起源/茶人が陶磁を発展させた/中国における製陶の起源/
皇帝と官窯が陶磁を発展させた/中国の龍文は権力の象徴/菊の紋章を持つ日本


おわりに──「借用」と「創造」の日本文化



彭 丹[ホウ タン]
著・文・その他

内容説明

日本には、中国ではいつのまにか廃れてしまった「中国」があると、著者は説く。漢字、着物、端午の節句などの行事等々。しかしそれらの「中国」は、どこか姿を変えた不思議な「中国」なのだ。そして茶の湯に親しむなかで著者は、名物茶碗や国宝茶碗の多くが中国から渡来した唐物で、しかも中国には残されていないことに気づく。なぜ日本人は唐物を自らの“国宝”としたのか。なぜそれらの優品が中国には残っていないのか。中国と日本の間に横たわる広くて深い文化的差異の大海に漕ぎ出した、まったく新しい日中比較文化論の誕生である。

目次

第1章 青磁茶碗の謎(中国青磁の原点、越州窯青磁がやってきた;茶人に重宝された「砧青磁」;「珠光青磁」と侘び;青磁茶碗の名付けと格付け)
第2章 天目茶碗の謎(日本人はそれを「曜変天目」と名付けた;玳皮天目の運命;油滴天目と禾目天目の流転)
第3章 祥瑞茶碗の謎(祥瑞の誕生;五良大甫と祥瑞の不可思議な関係)
第4章 龍文の謎(龍はいかなる存在か;陶磁器における龍文の日中比較)

著者等紹介

彭丹[ホウタン]
1971年10月中国四川重慶生まれ。日中比較文化・比較文学研究者。法政大学社会学部講師。四川大学で日本文学を学び、中国で航空会社に勤めたあと日本留学。東京学芸大学大学院にて修士号、法政大学大学院にて博士号を取得。研究の傍ら、茶の湯、能楽、禅など日本文化に親しんでいる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ホークス

32
中国人の文化比較研究者が、茶道体験と日中の陶磁研究を元に日本文化を読み解く。天目茶碗の考察が特に興味深い。感覚的だが、中国は美術に対してユニバーサルと言うか、技術の高い物や豪華な物を額面通りに重視する感じがする。曜変天目の美しさは「侘び茶碗」と違い万人に判るものだが、生産地の中国で好まれず日本にしか残っていない。その謎を日中それぞれの文化の変遷から解明するくだりは説得力があった。他、祥瑞や龍文の話も含めて検証が詳しく自分は消化不良だが、本書を通じて中国的感性の一端に触れられたのは良かったと思う。2018/02/13

R

25
なぜ、中国で作られた茶碗の多くが日本にあり、また、日本で評価されているのか。これをとても不思議だと感じた中国の方から見た、文化史をつづった本でした。興味深い考察もあり、読みどころが多いのだけども、自分が日本人だからか、どこか納得できないところもあり、議論をしたくなる内容。まず中国ありきで、そのカウンターとして日本の文化が醸成されたという風にもとれる内容なので、なんとかこれに反論する言葉を得たいと思った。耀変の不思議や、歴史の謎に挑む部分もあり面白かった。2018/02/19

宇宙猫

24
挫折。抹茶茶碗に興味があったんだけど、専門的すぎた。2015/12/19

デューク

5
中国生まれで、日本文化研究者である筆者による、日本と中国の比較文化論の決定版。 筆者は日本の茶道を学ぶうち、奇妙なことに気付く。千利休らが愛した茶器は多くが中国産であるが、本場の中国では雑器として扱われているものばかり。古いものや外から来たものを自家薬籠中の物にする日本文化と、革命方式で古いものを一掃する中国文化。2自国文化を知ることは、他者との比較をすること、それができる外国人の視点を借りることの重要性を、再確認させてくれる一冊。いちおし2017/09/11

tkokon

4
【興味深い】陶磁器について全く予備知識なく読み始めたが、興味深く読み進められた。日本の国宝となっている陶磁器14点のうち中国製が9点。茶碗では国宝8点中5点が中国製。しかし、同時代の中国ではほとんど評価されないものも多いという。砧青磁、珠光青磁、曜変天目、油滴天目、禾目天目など、初めて知る言葉ばかりだが、いつの時代に中国で作られ、いかにして日本い渡り、なぜ重宝されるようになったのか、筆者の仮説が楽しく読める。良いモノのなかで、時代に合致し、特別な意味合いが付与されるものが国宝として後世に記憶されるのだ。2016/01/06

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