出版社内容情報
僕らは誰も彼女のことを忘れられなかった。
私たち六人は、京都で学生時代を過ごした仲間だった。十年前、鞍馬の火祭りを訪れた私たちの前から、長谷川さんは突然姿を消した。十年ぶりに鞍馬に集まったのは、おそらく皆、もう一度彼女に会いたかったからだ。夜が更けるなか、それぞれが旅先で出会った不思議な体験を語り出す。私たちは全員、岸田道生という画家が描いた「夜行」という絵と出会っていた。
旅の夜の怪談に、青春小説、ファンタジーの要素を織り込んだ最高傑作!
「夜はどこにでも通じているの。世界はつねに夜なのよ」
【編集担当からのおすすめ情報】
春風の花を散らすと見る夢は
さめても胸の騒ぐなりけり
--西行法師
森見登美彦[モリミ トミヒコ]
著・文・その他
内容説明
『夜は短し歩けよ乙女』『有頂天家族』『きつねのはなし』代表作すべてのエッセンスを昇華させた、森見ワールド最新作!旅先で出会う謎の連作絵画「夜行」。この十年、僕らは誰ひとり彼女を忘れられなかった。
著者等紹介
森見登美彦[モリミトミヒコ]
1979年奈良県生まれ。京都大学農学部卒業、同大学院修士課程修了。2003年「太陽の塔」で第15回日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。07年『夜は短し歩けよ乙女』で第20回山本周五郎賞を受賞。10年『ペンギン・ハイウェイ』で第31回日本SF大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
1251
森見登美彦は、新作中心に読んでいる作家です。本作はシリアスな幻想怪異青春譚といった感じです。著者のユーモラスなファンタジーが好きな方には、合わないかも知れませんが、私はこの世界観好きです。但し、結末がぼんやりとしているので、もう少しインパクトが欲しかったかなぁ。2016/12/02
へくとぱすかる
1129
「ぽんぽこ仮面」読了直後の本書。あまりの世界の違いにたじろぐ。妖怪でも悪意でもない、夜そのものの不条理な怖さと、世界の歪みとずれ。こういうのを幻想小説と呼ぶべきなのか。気がつけば物語全体が夜の時間に包まれていた。明けない夜の淋しさ、距離感の抜群な表現がすばらしい。図書館本だったので、約1年間「読んでる本」登録のままでした。今回ようやく読了。2019/06/12
風眠
950
ここに存在している私は、確かに存在しているのだろうか?もしかしたら誰かが見ている夢の中の存在かもしれないし、知らぬ間に異世界へと迷い込んでいるのかもしれない・・・。夜の闇に囚われた芸術家が描いた『夜行』という連作絵画に誘われ、旅先でもうひとつの夜を彷徨う人々。永遠のように広がる夢幻の世界が反転する時、夜の向こうから射してくるのは、曙光。その光は、朝の兆しか、まやかしか。架空と幻想が、入れ子のように重ねられた物語でありながら、重厚すぎない文章がいい。阿保完全封印!こういう大人っぽいモリミーも、嫌いじゃない。2017/01/18
カメ吉
760
怖い作品でした。不思議な作品でした。『きつねのはなし』のような読後感でパラレルワールドの中に迷い込む感覚でした。 『曙光』と『夜行』と二つの世界でそれぞれのストーリーがあってミステリーより不気味な感じでした。2017/03/13
ehirano1
741
何かしらの解決を追求するミステリーと何かしら解決を(必ずしも)追求しない純文学を融合させるというチャレンジングに加え、パラレルワールドの要素を含ませた情報量の大変多い本作品は、多くの読者をさぞ困惑させたのではないかと推測しましたwww。かくいう私は勿論真正の困惑者です。一方で、考察することが愉しい作品でもあると思いました。2024/09/21