出版社内容情報
人間が犬の姿へと変わってしまう奇病「モンモウ病」。この病気にかかわるさまざまな登場人物の行動を通じて、手塚治虫は読者に「人間の尊厳とは何か?」という問いを投げかけている。巻末に評論家・呉智英の解説を収録。
▼第1話/ヘレン・フリーズ▼第2話/ネクロージス▼第3話/バザールにて▼第4話/閃光▼第5話/幻のマリア▼第6話/帰郷▼第7話/邂逅(上)▼第8話/邂逅(下)▼第9話/カタストロフィ▼第10話/プログノーシス●登場人物/小山内桐人(M大医学部付属病院医師・モンモウ病の研究を行っていたが、師である竜ケ浦の企みにより、自らモンモウ病にかかってしまい、世界各地をさまよう運命となる)、竜ケ浦(M大医学部付属病院第一内科医長・医師会の会長を目指し、モンモウ病を利用して業績を上げようと画策する)、占部(M大医学部付属病院医師・桐人とは古くからの仲だが、桐人・いずみと竜ケ浦の板挟みになって苦悩する)、いずみ(桐人の婚約者)●あらすじ/病院を抜け出していたモンモウ病患者のヘレン・フリーズを見つけ出し、占部は自分がヘレンを愛していることを打ち明ける。彼女は、かつて自分を力ずくで犯した占部を許していなかったのだが、彼の真剣な告白に打たれて、病院に戻ることにする。そして彼女の協力を得て、竜ケ浦は自らの権威をかけてモンモウ病についての講演を行なう。大勢の医師たちが見守るなか、竜ケ浦の指示に従って、ヘレンは下着をつけただけの痛ましい姿を
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
keroppi
72
下巻も一気読み。最悪な状況に追い込まれた桐人が、こうなった事実を知り復讐に立ち上がる。復讐で救われることはなく、人のために生きることで、人は救われるのか。節々に疑問を感じるところもないではないが、圧倒的な展開と描写力で読ませてしまう手塚治虫は、やっぱ凄いと思った。2023/06/27
しおつう
23
祖母の記憶によると、どこまで正確かはわからないが、昭和20年頃には、京都の東寺の境内で、見せ物小屋と称して、小人、蛇女、ろくろ首などの、恐らく奇形の人達を含めた見せ物が実際に行われていたということだから驚きである。昭和20年と言えば、太平洋戦争の終戦の年であり、人権も何も無かったのであろうが、この作品の創作時期も、そう遠くない頃だったはずである。また、野良犬や野良猫は当たり前に横行し、狂犬病などの感染症もワクチンすら無かったのではないか。そんな社会状勢を考えながら読むと更に興味深い。2020/11/13
剛腕伝説
13
もんもう病は、特殊な鉱物質による一種の風土病で有ることが判明した。竜ヶ浦教授のビールス説が覆され、竜ヶ浦は失意の内、もんもう病で息を引き取る。小山内の復讐は終わった。人間性を取り戻した小山内は患者の待つ外国の貧村へ帰っていく。確かに超大作ではあったが、モヤモヤも多く残る。2022/08/05
としピース
8
医師は医学部に入学し資格試験にパスすればその資格がありと認められ、医師の倫理観は資格とほぼリンクしていない。本書では「モンモウ病」という架空の難病の治療をめぐって、大学病院の医局内での対立や、日本医師会の会長選挙の権力闘争を描いている。主人公の医師の名、小山内桐人(きりひと)は「キリスト」からイメージして手塚が命名して、主人公に背負わせたのだ。モデルになった阪大医学部病院は、医師も設備も立派な病院だ。これからもこの大学病院から、人間の尊厳を一番に掲げる医師が多く排出されることを願ってやまない。2019/05/16
ayjoe
5
手塚治虫作品はただのマンガを超えたストーリー性に魅力を感じます。人の持つ卑しさがどうしたら救われるのか。2011/12/11