内容説明
車両の扉にがんじょうな閂が通された。ガターン…さあ出発だ…。作家ワシリー・アクショーノフの母、エヴゲーニヤ・ギンズブルグは極北の地での強制労働に連行される。スターリン独裁下のソ連。大学で教鞭をとり、忠実な共産党員でもあったインテリ女性がやみくもに粛清のターゲットにされた。集会での糾弾、職場追放、苛酷な取り調べ。夫と子供たちから引き離されて18年におよんだ苦難を、人間としての尊厳だけは失うまいと生き抜き、事態を常に冷静な目で見つづけて綴った、美しくも強靱な、こころの記録。
目次
暁に鳴る電話
最後の年
除名
取り調べるからにはちゃんとしたネタがある
ぼくを許してくれるかい?
寄るべないみなしご
ブトゥィルキ獄の洗礼
「徒刑―ああ、この天恵!」
ストルィピン車中にて
地下懲戒独房
獄内の火事
シュリッセルブルグの廃墟〔ほか〕