内容説明
車両の扉にがんじょうな閂が通された。ガターン…さあ出発だ…。作家ワシリー・アクショーノフの母、エヴゲーニヤ・ギンズブルグは極北の地での強制労働に連行される。スターリン独裁下のソ連。大学で教鞭をとり、忠実な共産党員でもあったインテリ女性がやみくもに粛清のターゲットにされた。集会での糾弾、職場追放、苛酷な取り調べ。夫と子供たちから引き離されて18年におよんだ苦難を、人間としての尊厳だけは失うまいと生き抜き、事態を常に冷静な目で見つづけて綴った、美しくも強靱な、こころの記録。
目次
暁に鳴る電話
最後の年
除名
取り調べるからにはちゃんとしたネタがある
ぼくを許してくれるかい?
寄るべないみなしご
ブトゥィルキ獄の洗礼
「徒刑―ああ、この天恵!」
ストルィピン車中にて
地下懲戒独房
獄内の火事
シュリッセルブルグの廃墟〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
twinsun
5
全てではないものの今なおスターリンを賛美・思慕する為政者とロシア人民にとって、忌々しい記録であろう。ただし上手く体制側になければいつの時代でもロシアではこうなのだと学ぶ上では立場や時代を超えた貴重な記録として輝きを持ち得る。専横体制のDNAが運命に逆らえない奴隷的気質をもった穏やかな多くは農奴あがりの人民を為政者の横暴の手先と成し、地主や貴族の過去を持ちぬくぬくと育ったものの貧しき人民を愛し、破綻する共産主義の理想を語るインテリに襲い掛かる。登場人物ざっと150人くらいか。著者の記憶力と感受性に感謝。2024/04/23
snow
1
圧倒的な筆力。一度読み始めたら最後まで読まずにはいられない。全三巻の長編だが、全く飽きさせない。そして、圧倒される内容。絶対に読んだ方が良い。かくも愚かなことがなされていたのか、よくこれで戦争に勝てたものよと驚く。2018/09/19
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- 和書
- 中級地方 合格400問