内容説明
自らが五歳から三十歳までを過ごしたアフリカの大地を舞台に、入植者と現地人との葛藤、古い入植者と新しい入植者の相克、巨大な自然を前にした人間の無力を、重厚な筆致で濃密に描き出す。ノーベル文学賞受賞作家の傑作小説集。
著者等紹介
レッシング,ドリス[レッシング,ドリス][Lessing,Doris]
1919年、ペルシア(現イラン)生まれ。5歳で南ローデシア(現ジンバブエ)に移住。1949年にイギリスに渡る。1950年発表の処女作『草は歌っている』が、欧米で大成功を収める。短篇集Fiveで1954年サマーセット・モーム賞、1981年オーストリア国ヨーロッパ文学賞、1982年ドイツ連邦共和国シェイクスピア賞を受ける。The Good Terroristで1985年W.H.スミス文学賞(イギリス)と同年度モンデッロ賞(イタリア)を、The Fifth Childでイタリア人大学生が投票によって選ぶグリンザネ・カヴール賞を受賞。2007年に、太古の女性社会を描いた最新作The Cleftを発表。同年、ノーベル文学賞受賞
青柳伸子[アオヤギノブコ]
翻訳家。青山学院大学文学部英米文学科卒業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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藤月はな(灯れ松明の火)
86
「呪術はお売りしません」や「二つ目の小屋」は「隷属しているものは全て支配国の文化に従い、公共の利益に還元されるべし」という思想が根底に有る白人の資本主義社会に対する文化としての矜持を描いていると思う。「デ・ヴュット夫妻」なんて若い二人のバカップルぶりは確かにイラッとするけど、キャロラインの独善性も考えものですね。「ハイランド牛」のマリーナも。唯一、「アリ塚」の因習に反抗する若い二人の友情は清涼剤。だけど、これからの彼らの茨の道を示しているようなラストの一文に祈らずにいられない。2017/05/14
funuu
15
白人、黒人、混血児。男と女。アフリカが飲み込む。やはり日本人はグローバルから離れたガラパゴス民族であるのを痛感させられる本。2016/06/08
syaori
8
すごくおすすめです。植民地時代のアフリカを舞台にした短編集です。なんというか、すごくもどかしい思がします。主人公たちは、白人と黒人だったり妻と夫、父と息子、主人と使用人だったりしますが、相手に対し分かりたいけれども、分かってもらえないという思いを持っています。もしかして分かったかもと思うとそうでなかったと立ちすくむ感じ。作者はそれを淡々と中立的な視点から書いています。劇的な何があるわけはないのですが、その淡々とした感じが心地よいです。どれでもいいので、まずは一編読んでみてください。2015/09/11
みか
5
2016年9月3日読書会課題本。読書会では「老首長ミシュランガ」「呪術はお売りしません」「リトル・テンビ」「草原の日の出」「七月の冬」を読みました。「老首長ミシュランガ」「呪術はお売りしません」「リトル・テンビ」の3篇は、白人農場主家族と現地人の関係を題材にしている。ヨーロッパ人の植民地支配と、それを正当化するアフリカ人への差別意識がよく描かれている。農場主の娘は、現地人に対して差別し、虐待することが<正しいふるまい>(=自明なこと)と教育されていて、少女から女性へ成長していく。読んでいてとても辛い。2016/09/03
Mabo
5
ほぼすべてが植民地時代のアフリカ(≒南ローデシア=現在のジンバブエ)を舞台にした短編集。白人と黒人の軋轢や差別的感情にばかり目が行きがちだが、よく読んでみると人種にかかわらずそれらは発生している(白人しか出てこない『七月の冬』)。作中人物を通して物語られるので、文章をそのまま鵜呑みにすると大事なことを見落としてしまう。お気に入り①『呪術はお売りいたしません』:金のために”後進国の民の技術”を手に入れようと擦り寄ってくる白人が、ケン・リュウ『結縄』とまったく同じなのでそれを思い出した。2015/10/09
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