内容説明
会津藩では奥羽鎮撫総督に対し、恭順降伏で藩論の一致をみていた。しかし、総督府では好戦派が幅を利かし、勅諚を振りかざして仙台藩に会津征討を命じる。閏四月二日、理不尽な戦闘の火蓋が切られたが、仙台藩や米沢藩などが会津救解に動き、やがて薩長の横暴に対して奥羽諸藩の列藩同盟結成の気運が高まっていく。吉川英治文学賞受賞作品。
感想・レビュー
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うらなり
10
伊達、米沢藩による平和解決をどうしても阻止したい世良修蔵は仙台藩軍事局の手で福島の妓楼金沢屋にて誅殺される。伊達藩を愚弄し、侮り油断の結果である。2020/09/20
連雀
3
彰義隊もそうですが、奥羽越列藩同盟についても頑迷固陋な旧幕勢力が新時代の到来を拒み、混乱を助長するけしからん話だと私は長い事思っていました。なので、本作では最初から驚きの連続ではあったのですが、いよいよ会津戦争が始まるまでの今巻は非常に興味深かったです。考えてみると、これまで私はいかに北日本に目を向けてこなかった事か…2018/01/12
東森久利斗
2
呉越同舟。船頭多くして船山に上る、烏合の衆の悲劇。寂しい限り、東夷の底意地、反骨精神の片りん。不甲斐なさに、政宗、謙信も、草葉の陰で泣いていることだろう。奥山の静寂を破る砲声、銃声、跫音、嬌声、怒号。敗者の生きざま、近代日本が如何なる犠牲のうえに成立し、負債として現代に受け継がれているか。膨大な手記、建白書、文献、史書を通してその実相に迫る。2024/01/15
ふとし
0
官軍を称する薩長の横暴に、我慢の限界を感じた奥州諸藩はついに奥羽越列藩同盟を成立させる。正義を愛すればこその同盟は最後の古きよき武士魂の結集。長州の世良修蔵の成敗は爽快。しかし、戦闘が本格化するにつれ、奥州の旧式兵器では近代兵器を備えた官軍にはまるで歯が立たないことが明白に。2013/01/10