内容説明
エンジン開発に心血を注ぐ五十島繁哉と、会社経営の実務に辣腕を振るう神山竜男の運命的な出会い。この二人の男を軸に「本州モーターズ」は、小さなオートバイのメイカーから、世界的に有名な自動車会社へと飛躍する。だが、企業理念の差異、感情の行き違いから五十島と神山の間には、越えがたい溝ができる…企業の“虚”と“実”、経営者たちの夢を描いた長篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アッシュ姉
72
本田技研工業が世界のホンダと呼ばれるまでのストーリー。本田宗一郎ではなく、副社長の藤沢武夫を主人公に描いた異色作。知らなかった二人の関係がとても興味深かった。研究開発に没頭する本田宗一郎を支え、経営の一切を取り仕切り、幾度の危機を乗り越え会社を大きくしていった藤沢武夫。栄光のナンバー2といわれた男の悲願は社長の椅子。トップの座に固執しすぎたところはあるものの、人間くさい彼のことは嫌いではない。もっと早く宗一郎氏が真意を告げていたなら何か変わっていたかもしれない。2022/01/31
まつうら
18
本田宗一郎と藤沢武夫をモデルにした物語。しかし、藤沢をモデルにした神山は、世間で知られているよりもダークなキャラクターで描かれている。藤沢武夫は理想のナンバー2と言われ、MBAの教材にもしばしば取り上げられるくらいなので、このダークな神山にずっと違和感を感じたまま読了した。 しかし最後の解説を読んで、著者が根拠もなく藤沢のことをダークに仕立てたわけではないことがわかった。美談に語られた同時退陣の裏で、どうしても社長になりたかったひとりの人間の葛藤をあぶり出した著者の筆力は、なんとも興味深い。2021/09/06
淡雪
3
清水一行の作品で一番の傑作は小説兜町だが、一番面白いのは本作。 よく主人公を悪く書いているというが、たしかに最後の預金についてはそう。しかし、主人公が何度もホンダの経営危機を救った(やり方が無茶苦茶だが)のは事実で、その功績を社長が認めていない(しかも経営は全部おしつけている)ところに悲劇がある。 社長の「車を作る技術者が社長をすべきだ、俺の会社なんだからそうする」というのは一見正しいが、トヨタも日産も米国三社もそうでない。しかしだまって相打ち辞職に同意する主人公は一方通行のBLだ。片思いはいつも美しい。2021/09/22
ろびん
1
こういう種類の話には珍しく結構爽やかな終わり。2017/12/28
ケンメイ
1
★4