内容説明
膨大な書物を暗記するちから、遠くの出来事を知るちから、近い将来を見通すちから―「常野」から来たといわれる彼らには、みなそれぞれ不思議な能力があった。穏やかで知的で、権力への思向を持たず、ふつうの人々の中に埋もれてひっそりと暮らす人々。彼らは何のために存在し、どこへ帰っていこうとしているのか?不思議な優しさと淡い哀しみに満ちた、常野一族をめぐる連作短編集。優しさに満ちた壮大なファンタジーの序章。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
風眠
493
なんだか、こういう特別な能力をもった人たちが、本当にいるんじゃないかと思ってしまう。電車で隣に座った人が、そうではないと言い切れるのかな・・・とか。『常野』という不思議な能力をもった人たちが、在野に紛れてひそやかに暮らしている様子が描かれた連作短編集。短編だが、ひとつのまとまった物語を読んだような読後感だ。常野の人々が持つ不思議な能力を戦争に利用しようとする権力、抵抗して倒れていく子どもたち、彼らの行く末までをも、その不思議な能力で予知し、時を超えて待ち続けるツル先生の姿がとても印象的だった。2012/06/17
さてさて
429
様々な特殊能力を持つ常野由来の人々のお話が詰まったこの作品。「大きな引き出し」なので「しまう」、「オセロ・ゲーム」だから「裏返す」、そして「歴史の時間」は「思い出す」という独特なタイトルのリズム感が心地よく一気に読み切ったこの作品。最後の「国道を降りて…」の何かが動き出すようなゆっくりと胎動し始めたかのような予感を感じさせる終わり方含め、恩田さんが『手持ちのカードを使いまくる総力戦』と書かれる通りの読み応えある短編が目一杯詰まったこの作品。恩田さんの絶品のファンタジー世界を堪能させていただいた作品でした。2021/11/21
kishikan
276
文庫の良いところは、作者あとがきや、解説があるところ!この「光の帝国」の久美沙織の解説は、きびきびとした文章とキレ味するどい内容で非常に面白い。さてと・・・。常野物語の読後感は、いつもその内容のせつなさや哀しさの反面、優しい光に包まれたようなほっとした感覚がある。常野物語の各作品に共通しているもの、それは常野の人たちが持っている不思議な能力のように、僕たち人間には忘れかけているかもしれないけど、皆が「生きるという力」をもっているんだよ、ということを言いたいのではないか。もう一作「エンドゲーム」で確認しよう2010/12/20
射手座の天使あきちゃん
265
不思議な力を秘めて、慎ましく控えめに生きる常野の人達 父の記憶を息子の映画監督に伝える春田光紀に激泣きでした (/-;)
とら
262
常野一族をめぐる連作短編集。…”とこの”を”つねの”と読んでしまったことは内緒です笑 完全に騙された。この少し幻想的?いやおどろおどろしい表紙と「光の帝国」の題字。ダークファンタジーか何かと思えば、割と現代の話も入っていたり。そして連作短編集、という形体になっていたとも露知らず。でも、めちゃくちゃ好みだった。ここでこの話と繋がるのか!とか、例えば伊坂作品とか海堂作品でよくある世界観共有?他の作品の登場人物が出て来た時のあの、おー!こんな所に!という感覚が連続で楽しめる。続きが気になる短編も多し。次も近々!2013/11/06