内容説明
日本人では考えられないような深さ、すごみを持ったインドのネルー。モンパルナスの部屋で楽しく雑談をかわしたサルトル。刺身を豪快にたいらげる太宰治。逗子の自宅にかくまったアメリカの脱走兵。時代を切り取った人びととの交流のありさまが、いまふたたび生きて目の前に現われる。「広場の孤独」「ゴヤ」など幾多の傑作をものした戦後文学の巨匠が、初めて肉声で語る自伝的回想録。
目次
何から話をしましょうか
上海で敗戦の報告を聞く
国やぶれてのちに…
作家会議とCIA
中ソ対立のはざまで
サルトルとヨーロッパ
昨今のソヴィエトを見て思うこと
北の国から
若き日のカストロ
ゴヤをたずねて〔ほか〕
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
もりくに
62
本書は堀田善衛さんが70代になって、編集者の求めに応じて語り下ろした「自伝的」回想録。第二次大戦末期から敗戦後での「上海」暮らし、その後の米ソ冷戦時代で存在感のあった「第三世界」での作家会議活動から得た「歴史」への深い洞察から紡ぎ出された物語は非常に興味深い。また、その活動中に会った多くの外国の著名人との交わりも、大いに興味をそそった。裕福だった実家の「廻船問屋」の没落と、大学予科入学時に遭遇した二・二六事件によって、国家も永久不変でないという「中世の無常観」的感覚を強く得たことは、後の人生に影響した。→2021/03/14
penguin-blue
42
読んでないくせに「美しきもの見し人は」という著作名から勝手に病弱な耽美系人物を想像していたら予想に反して金成の理論派行動派。特に前半の印象は文学者というより企業人や実学系の大学教授が書いた「私の履歴書」みたいな感じ。綴られている世界の著名人との実際の交わりはもちろん、終章近くの「西行、定家、そして長明」の西行フィクサー論など歴史上の人々に対する分析も興味深く他の著作にもぜひ挑戦してみたい。2019/01/04
蘭奢待
35
初の堀田善衛作品だが、思いがけず良書に遭遇。連綿と続く世界の歴史をしっかりと捉え、鋭い洞察とゆるぎない視座で世界を捉え、解き明かす。知らなかった史実の裏面や歴史観に基づく考え方が次々と現れ、とたも目を開かされる。歴史上の人物と直に接してきた迫力は並大抵ではない。ヨーロッパと中東の関係を中心に非常に興味深い。語り口調で読みやすく、オススメ。2019/01/16
ばんだねいっぺい
22
なんで、あの時代にこんなにも近代的でクールな感覚を持っているのかと疑問を持つと同時に恐れおののいた。 そして、自分にゃ骨のある思想なんてものはないなと、自分のなかで、何かが小さく死んだ。タネムラスエヒロが出てきた。タネムラスエヒロを読みたくなった。2018/11/15
Michael S.
8
堀田善衛の自伝的回顧録。特に上海での話が面白い。作者は東京大空襲に遭ったあと、戦争末期の上海へ渡る。この本に出てくるような敵国の都市上海で、日本人と交戦相手国の中国人との間で、こんなに率直な情報交換をして、様々な結びつきがあった事実が新鮮でした。知識人同士だと世界中どこでもこんな感じなのかもしれない。他方で外国へ行くこともできずステレオタイプの自国語ニュースでしか情報を得られない一般民衆は、権力者にいいように敵愾心を煽られて悲しい。これはSNS時代でも変わらないと思う。直接見聞きする体験の大切さを痛感。 2019/02/24
-
- 和書
- テレビが中国を変えた