内容説明
庭で育てたレモンの木からレモネードを作り、針仕事で暮らしている「おんなのこ」。両親は最初からなく、車も運転できる古びた「お皿」と住んでいる―。仕事で訪れた街で道に迷い、帰れなくなった新聞記者の「私」は、客として彼女たちにもてなされることになるのだが…。けっして変わらないものが存在し続ける、そんな場所で出会った、小さな女の子との、いっぷう変わった長い長い友情の物語。
著者等紹介
江國香織[エクニカオリ]
1964年東京都生まれ。小説、童話、詩、エッセイ、翻訳など、幅広い分野で活躍している。2002年、『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で第15回山本周五郎賞、03年、『号泣する準備はできていた』で第130回直木賞を受賞
こみねゆら[コミネユラ]
1956年熊本県生まれ。1985年フランス政府給費留学生として渡仏、8年半滞在。2005年『さくら子のたんじょう日』(宮川ひろ/文)で日本絵本賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
463
文体と用いられている言葉からは大人向きを意識した作品であると思われる。そう、大人にこそファンタジーが必要なのである。道を歩いていたら、いきなり異世界に迷い込んでしまう。それは、まさに昔話の構造でいえば『うぐいすの里』に他ならない。そこで出会う「女の子」(とうとう最後まで名前はない)の言動の微妙な非日常性が実に好もしくもあり、そして味わい深い。その子を仲介者として、私たち読者もまた、この異世界に自然に入り込んでいくことができるのである。お皿が車を運転することにもさほど驚かない。何といってもこの世界の論理は⇒2022/12/29
ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中
182
「はじめから、ひとりぼっちだったの」「でもね、だからといって、いつまでも悲嘆に暮れているわけにはいかないでしょう?そんなのはあたしらしくないふるまいだもの」おしゃまで気高く、可愛らしい女の子。 列車に乗って海へ行こう。波と砂に足を洗わせて、白ワインとレモネードを傾けよう。雨の日はお菓子をたべてお茶をのみましょう。「私たちをほんとうにしばるのは、苦痛や災難や戸棚ではないのよ。幸福な思い出なの」迷子になって途方に暮れたときでも、私だけのすきまにおともだちがいるというのはとても幸福な想像だ。2019/11/03
風眠
155
もう、わかってないのね、って感じで、レディみたいな話し方をする小さな「おんなのこ」。うん、まさにレディって感じ。ある日「隙間」に落っこちた新聞記者の女性が出会った「おんなのこ」は、もしかしたら自分の片隅にあって、すっかり忘れているけれど、存在しているはずの自分自身、かもしれない。古いお皿に肘掛け椅子、サンドウィッチとフルーツとスープ、そこはかとなく漂うイギリスの雰囲気。榛野なな恵『Papa told me』が好きな人なら、きっとこの「おんなのこ」が好きになる。私の中の「おんなのこ」をくすぐる、美しい物語。2013/04/27
匠
119
こみねゆらさんの絵は表紙だけじゃなく、挿絵としてかなりたくさんの絵が見れて、それだけで優しく温かい気持ちになれた。童話的な物語であり文体なのだけど、内容はとてもシュールで不思議な読後感。すきまって何を意味するのだろう?と考えながら読み進めていくうち、時間軸の違う世界とか現実と虚構の狭間とか、「おんなのこ」と「大人の私」の思考回路のすきまだったりするのかなと思えた。話は全然違うのになぜか「星の王子様」や「長靴下のピッピ」を彷彿とさせる部分もあり、きっと何度も読み返していくと別な何かに気づけそうな気もする。2013/09/05
優希
118
とても心が穏やかになるファンタジックストーリーでした。童話のような口調がメルヘンの雰囲気を感じさせます。旅先で迷い込んだ「すきま」で出会った小さな女の子とおしゃべりなお皿。帰れなくなった「私」と不思議な魅力を持つ彼女たちの間に芽生えていく友情がとても素敵でした。現実の目まぐるしい時間の流れとは異なり、時が止まったような永遠のある「すきま」。そこには時が経つにつれて忘れていったり落としていったりしたものが沢山あるような気がしました。ふんわりとした空気の中で大切なことを教えられたように思います。2016/08/28
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