出版社内容情報
水野忠政の娘お大は、松平広忠に嫁ぎ家康を生むが、離縁され久松俊勝に再嫁。しかし、陰から家康を見守り、武士としての成長を支えた。家康を天下人にした慈母の波乱万丈の生涯。(解説/伊東 潤)
植松 三十里[ウエマツミドリ]
内容説明
水野忠政の娘お大は十四歳で岡崎城主松平広忠に嫁ぎ、嫡男竹千代を産む。だが、実家が織田方に寝返ったため、離縁され、幼い息子と生き別れた。久松俊勝と再婚後、竹千代が、今川義元方へ人質に出されることを知る。わが子の無事を祈るお大は、命がけの行動に…。戦なき世を願う母と、その願いを果たすため天下人家康となった息子。知恵を尽くして戦乱の世を生き抜いた女の波瀾万丈の生涯。
著者等紹介
植松三十里[ウエマツミドリ]
静岡市出身。昭和52年、東京女子大学史学科卒業後、婦人画報社編集局入社。7年間の在米生活、建築都市デザイン事務所勤務などを経て、フリーランスのライターに。平成15年「桑港にて」で歴史文学賞受賞。平成21年「群青 日本海軍の鮮を築いた男」で新田次郎文学賞受賞。同年「彫残二人」で中山義秀文学賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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あすなろ
81
武将の家に生まれた女の役目。女は合戦場には出られぬがその代わり子を産んで自分の思うように子供を育てられる。そんな時代の家康の母の物語である。たった一通の置き手紙で天下人を育てたと植松氏は母子を描く。数奇な人質人生を歩んだ家康。その母もこのような数奇な運命を歩んだとは僕は知らなかった。段々と平易に、しかし結構な知識を盛り込んでいる植松氏の筆に頁を誘われながら読める作品。そんな物語の軸である母の置き手紙は、いくさなき世を われはまちはべり。である。2021/10/29
ぶんこ
52
戦国の時代、子どもだけではなく母までもが人質となったり、嫁にいかされたり、実家に戻されたりしていました。自分の母お富を幼い頃に敵方に政略結婚の為に奪われた哀しい出来事から、また自らも実家の兄と夫との狭間で、幼い竹千代をおいて離縁となった時、「家中のために生きたまえ。戦なき世を、われは待ちはべり」との書き置きを残します。竹千代は、母の書き置きを大事にして成長。竹千代もまた何度も人質となりながら、戦乱の世を生き延び、母の願いを叶えたのです。この母にして家康あり・・と思わせる気丈であり、心優しい人でした。2016/11/09
さつき
34
表紙の可愛い赤ちゃんに心惹かれて。徳川家康の生い立ちがかなり悲惨なことは知っていましたが、改めて母目線で読むと同情してしまいます。ただ生母と生き別れたのは数えで三歳とのことですが、年末生まれならほぼ1歳児ですよね?その時点で数を数えられたり、幼児語でなくきちんと話していることに違和感を感じてしまいました。神君になる人だから一般人とは違うだろうけどさすがに無理があります。話し自体は家康の異父弟や生母の再婚先について詳しく語られていて面白かったです。2016/09/08
美月0217
31
この人の本、どの本も好きだ〜っ!家康の母であるお大!なんて賢い人でしょう…賢いだけでなく心が強く優しい!!だからこそ、あの家康公ができるんだな…2016/08/27
オリーブ
14
家康の母お大の目から観た戦国時代。当時の女性たちは家を守るために人質に出されることは当たり前だっただろうけど、それでも幼い子どもとの別れの場面は胸が引き裂かれるようで苦しくなった。どの戦国武将も一刻も早く戦国の世を終わらせようとするために彼ら、彼女らはこの哀しい運命を受け止めざるをえず、それが天下泰平の江戸時代に繋がっているんだな。タヌキおやじとか言われて狡猾なイメージもある家康だが、植松さんによって母目線で優しく温かく描かれている。そして、また表紙の絵が更に心を温かくしてくれる。2017/06/04