出版社内容情報
寸暇を惜しみ、熱心に修行を続ける篤蔵は華族会館、上野の精養軒で働き、ついに西洋料理の本場、パリへ。大正、昭和の時代、宮内庁主厨長まで登りつめた男の生きざまを描く感動長編。(解説/吉村千彰)
内容説明
好奇心旺盛な篤蔵は、寸暇を惜しみ熱心に修業を続け、華族会館、そして上野の精養軒で働くことになる。フランス語も習得し、ついに西洋料理の本場、パリへ。各国の王室貴族などが集まる一流ホテルで下働きとしてスタートした彼は、人種や言葉の壁、文化の違いを乗り越えて、一人前の料理人として認められていく―。大正と昭和の時代、宮内省主厨長まで登りつめた男の生き様を描く感動長編。
著者等紹介
杉森久英[スギモリヒサヒデ]
1912年石川県生まれ。東京帝国大学国文科卒業。旧制埼玉県立熊谷中学校の教師となった後、中央公論社編集部に入社。その後、いくつかの職を経て河出書房に入り「文藝」編集長となる。62年『天才と狂人の間』で第47回直木賞受賞。85年『能登』で第13回平林たい子文学賞、86年『近衛文麿』で第41回毎日出版文化賞を受賞し、89年勲三等瑞宝章を受章。93年に第46回中日文化賞、第41回菊池寛賞を受賞。97年1月逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ハイク
169
篤蔵の性格は向う見ずな所があるが、それ以上に自分の志に邁進して行く。親の支援もあり単身フランスへ行ったのが大きく彼の運命を変えた。皇太子英国訪問時に誰も真似できない情熱と行動、そして英国皇太子答礼訪問時の奮闘で、彼は正に不屈の精神が開花した。上下巻通して類稀なる日本男児の生き様を読み、感嘆すると同時に驚きの連続であった。著者の脚色があるかも知れないが、実際の人物と大きな隔てはないのであろう。晩年にも盆栽、絵画等にも素人を超えた才能を遺憾なく発揮した。そして皇室から信頼され心から愛した一人であったようだ。 2016/01/22
しのぶ
127
タイトルを知っていたので気になって手に取った伝記小説。上下巻で読みごたえがあった。好奇心旺盛でその一生を料理人として全うした篤蔵が主人公。その道を極めるのであれば貪欲に自ら学んでいかねばならない。資料を基にして書かれたであろう伝記であるせいか文章が少々硬く感じられたが(特に後半美味しそうな料理描写がないせいもあるか)個性あるキャラクターと仕事に一生を捧げたドラマティックな人生で充分楽しめた。2018/06/30
抹茶モナカ
100
料理人・篤蔵はフランス留学を経て、天皇の料理番になる。時代は、大正、昭和と移り変わり、篤蔵が引退するまで描かれる。実在の人物をモデルにした伝記小説。比較的、硬質な文体なのだけど、それほど難読ではなかったです。2015/03/28
七色一味
73
読破。この人は、常に心のなかの「料理人としての飢え」に苛まれているかのように、貪欲に全てを吸収しようとしている。料理に対する姿勢は苛烈で妥協がないのに、その割に私生活は案外適当というか奔放というか…。その部分に関しては相容れないものがあったりします。主人公の表現が結構極端で、粗暴であったり細やかであったり。不思議な人であると同時に、実際にあってみると、気に喰わないやつじゃないかと思ったりしました。なんというか、この人らしいラストにちょっと感動したりしました。2015/06/29
Rin
67
[借本]フランスでしっかりと修行を積んで、天皇の料理番としてもしっかりと働く篤蔵。日本と他国の食文化の差。その料理に携わる人たちの、他者からの評価の違い。昔の日本で料理人がある意味軽んじられていたというのは少しショックな事実だった。そんな中で篤蔵がひたむきに努力を怠らず少しずつ周囲の人の評価を変えていく。料理一筋に邁進していた彼は家にも、そして妻にも恵まれていたんだな、と。だからこそ、大切な相手を失った時の悲しみは深くて。上巻よりも篤蔵の生涯がとても濃厚に詰まっていた下巻でした。料理の歴史も学べた一冊。2018/10/09