出版社内容情報
聴覚をテーマに描いた表題作ほか、五感をテーマにした5編+Extra stage「第六感」からなる本格ミステリー連作短編集。
内容説明
朝人が詩織を連れ出した満開の夜桜の下には、痛ましい事件が埋まっていた。少女が起こしたクラスメイトの毒殺、恋人同士の扼殺、中学教師による教え子殺し…なぜ、ここで殺人が起きるのか?少女が口にしていた「桜の音が聞こえる」という言葉も謎を深めていく(「サクラオト」)。聴覚を鍵に描いた表題作など五感をテーマにした五編+Extra stage「第六感」からなる本格ミステリー連作短編集。
著者等紹介
彩坂美月[アヤサカミツキ]
山形県生まれ。2009年『未成年儀式』で富士見ヤングミステリー大賞に準入選し、デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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乱読太郎の積んでる本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さてさて
141
『〈五感〉を題材にしたミステリ短編を書いてみないか』。編集者からの依頼を元に出来上がった『五感』にこだわる物語は、〈第六感〉の主人公・沢村碧によって書き下ろされたものという体裁を取るこの作品。そこには、5つの短編それぞれに描き出された『五感』に焦点を当てる物語と、そんな短編を一つに繋ぎ合わせる〈第六感〉の物語が描かれていました。表題作に描かれる『桜』の描写に酔うこの作品。絶妙な構成に読後もう一度読み返したくもなるこの作品。“五感をテーマに描かれる謎と闇”、本の帯に記された通りの世界観が楽しめる作品でした。2025/01/29
sayuri
98
「サクラオト」「その日の赤」「Under the rose」「悪いケーキ」「春を摑む」「第六感」6話収録の連作短編集。彩坂作品に漂う不穏さは今回も健在。本作では更に緊張感もプラスされ趣向を凝らしたミステリーとなっている。春夏秋冬の各季節に聴覚・視覚・嗅覚・味覚・触覚の五感を掛け合わせた構成は新鮮。ライトノベル風な装丁で軽いミステリーをイメージしていると良い意味で裏切られ予想していた結末は見事に覆される。春の日中に見る満開の桜は美しいけれど夜桜はどこか禍々しさを感じる。その桜の様に人の心の多面性に慄く読後。2021/03/07
へくとぱすかる
81
思わず、「舌を巻く」という言葉を思いつく。それほど見事な構成だと感じた。人間の五感それぞれをモチーフにした短編、というだけでもすごいと思うのに、これを連作にした作者の仕掛けにはまいってしまう。とうの昔からミステリの世界は、物理トリックから心理トリックへと重心を移しているが、この作品もまた、人間の心を非常に細かく、ゆれ動くものとして描いていて、ついつい作品の中に自分を没入させてしまった。物語が、読みかけのときには思いもよらなかった結末に行ってしまうので、はしごをはずされてしまった感覚には半端ないものがある。2023/02/12
★Masako★
77
★★★★☆ 彩坂美月さん初読み♪音や色等、五感をモチーフにした五話にExtra stageの「第六感」を加えたミステリー短編集。また1話目は春、2話目は夏と季節も順に巡り、5話目はまた春へ。どの話もゾクゾク感がたまらないしっかりしたミステリーだ。そして、読み進めるうちにある事に気づく。それがはっきりするのが最終話だ。ああ、そういうことなのか…。見事な構成、伏線、仕掛け。好みは夜桜の下、緊張感がどんどん高まっていく表題作、不可解さに対する心理描写が上手い「春を掴む」。彩坂さんの他の作品も読んでみたくなった♪2023/03/27
えみ
65
聴覚・視覚・嗅覚・味覚・触覚の五感+第六感がテーマとなって揺れる心と日常の変調、そして始まりと終わりが細微に亘って描かれた一冊。人の感覚と四季が重なり合って、人間を浮かび上がらせる。一話そして一話と個性が光る6篇収録の短編集。そこに隠されたメッセージとは何か?気を抜くなかれ、桜が桜故の存在感を発揮した物語は、美しく妖しく闇に色彩付ける役割を果たし、驚きの真実が待ち受ける最終話を妖艶に飾りつけている。読者にお披露目される本書は息吹を吹き込んだ謎と罠が交差し、連作としての効果を十分に発揮した意表を突いた小説。2021/01/23