集英社新書<br> 敗者の想像力

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集英社新書
敗者の想像力

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  • サイズ 新書判/ページ数 272p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784087208825
  • NDC分類 914.6
  • Cコード C0236

出版社内容情報

日本の「戦後」認識にラディカルな一石を投じたベストセラー『敗戦後論』から20年。第二次大戦に敗れた日本が育んだ「想像力」を切り口に、敗北を礎石に据えた新たな戦後論を提示する。




加藤 典洋[カトウノリヒロ]

内容説明

一九四五年、日本は戦争に負け、他国に占領された。それから四半世紀。私たちはこの有史以来未曾有の経験を、正面から受けとめ、血肉化、思想化してきただろうか。日本の「戦後」認識にラディカルな一石を投じ、九〇年代の論壇を席巻したベストセラー『敗戦後論』から二〇年。戦争に敗れた日本が育んだ「想像力」を切り口に、敗北を礎石に据えた新たな戦後論を提示する。本書は、山口昌男、大江健三郎といった硬派な書き手から、カズオ・イシグロ、宮崎駿などの話題作までを射程に入れた、二一世紀を占う画期的な論考である。

目次

はじめに 想像力にも天地があること―小津安二郎、『敗北の文化』、カズオ・イシグロ
第1部 敗者の日本(私たちが被占領民だったころ―W.G.ゼーバルト、林達夫、朴泰遠;占領下の文学―第三の新人、曽野綾子、大江健三郎、目取真俊;ゴジラは死んで、どこに行くのか?―本多猪四郎、R.エメリッヒ、G.エドワーズ;シン・ゴジラ論(ネタバレ注意)―庵野秀明)
第2部 敗者の戦後(低エントロピーと「せり下げ」―山口昌男と多田道太郎;世界の奴隷として考えること―吉本隆明と鶴見俊輔;「成長」なんて怖くない―宮崎駿と手塚治虫;大江健三郎の晩年)
終わりに 『水死』のほうへ―大江健三郎と沖縄

著者等紹介

加藤典洋[カトウノリヒロ]
1948年、山形県生まれ。文芸評論家。早稲田大学名誉教授。東京大学文学部仏文科卒。文学から文化一般、思想まで日本の近現代の幅広い分野で活躍。『言語表現法講義』で新潮学芸賞、『敗戦後論』で伊藤整文学賞、『小説の未来』『テクストから遠く離れて』で桑原武夫学芸賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

佐島楓

70
訃報とともに、高橋源一郎さんがラジオで触れていらっしゃったのがきっかけ。サブカルからの引き方など、主に論の方法において参考になった。文章の感触が好印象だったのが嬉しい……と同時にやっぱり後悔。なぜもっと前から読んでいなかったのか……。圧倒的に勉強量が足りてないな私……。2019/06/19

ころこ

34
ネタの多くは初出でないようですが、タイトルの言葉で纏められている議論の地平は広大です。結論めいていない文章を書く力は傑出しています。「本気」は出していないようで、いつものように議論の厚みはありません。むしろ短く平易な文章で渉猟することによって、視点の確かさが強調されています。ここに登場する未読の小説を無性に読みたくなりますし、既読の小説の読みが欠落していることに気付かされ、再読してみたくなります。安岡章太郎『ガラスの靴』が、批評性から「重さ」を抜き取られており、大岡昇平『野火』と「隣り合っている」という読2019/12/15

ケディーボーイ

28
文芸評論としてはとても興味深く読めたし説得力もあった。 それが導く「敗者の想像力」が大事というのにも異論はない。 しかし今やそれだけでは足りないのではないか。 敗者の視点は重要だが、負けたものが必ずしも広い見識を得るわけでもないのはマイノリティがマイノリティを虐げる有様をみていれば周知の事実。 はたして「敗者の想像力」は、「敗者への想像力」になりえるのだろうか。 文化相対主義の限界から抜け出てない論に思えていまさら感が否めない。 また、アジアへの視点がほぼ無い所が気になる。日本は敗者なだけではないのでは…2021/11/25

ユーカ

21
文学や映画から読み解く初歩的な戦後思想にはじまり、「シン・ゴジラ」論を間に挟んで、思想家たちについての本格的な内容へ。そして最後には、大江健三郎の「水死」についての論考という流れになっている。頭から最後まで、“考えること”を刺激され、夢中になりながらも努めて丁寧に読み進めていった(実際に「シン・ゴジラ」も観たりして)。やはり、最後の大江健三郎「水死」についてが素晴らしく、気がつくと息を止めているような読書。敗者の想像力を持って奥深くまで潜るようにして考える姿に、私は神々しいとまで感じながら強く憧れる。2018/09/11

skunk_c

19
文芸批評は殆ど読まないのだが、これは『永続敗戦論』での議論を別の角度から見ることができるのではと期待して読んだ。いやいや、こちらの方がはるかに深い。多くの知識と洞察が随所に感じられるのだが、文章は明晰かつ平易で読みやすい。書き手の力を感じた。敗者とは敗北から逃げることなくそれを認め、受け入れるもの。それが敗者の視野を広げ、勝者に勝るものになる。これをヘーゲルの弁証法、宮崎駿とディズニーの対比などで論じていく第2部は圧巻。特に最後の大江健三郎論は白眉で、『水死』を読みたくなった。「シン・ゴジラ」論も面白い。2017/08/14

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