出版社内容情報
1945年、晩秋。日本は太平洋戦争に敗れ、朝鮮半島で生まれ育った阪上群青は、母と引揚船に乗った。だが船中で母とはぐれた直後、群青は何かが海に落ちる音を聞く。その場にいたのは赤城壮一郎という男。ひとり下船した群青は〈謎の中年男〉から「赤城が君の母親を海に突き落とした」と告げられる。疑惑を拭えぬまま、初めて踏む祖国の地で行く当てのない群青は、声をかけてくれた赤城とともに「焼け野原の東京」を生き抜くことに。戦後の混乱期、上野の闇市で商売をするうちに人々が衣食の次に欲するのは「清潔」だと気づき、二人は仲間たちと石鹸会社を立ち上げた。ともに困難に立ち向かう日々のなか、群青にとって赤城がかけがえのない存在となっていく。だがそんな群青の前に引揚港で遭遇した〈謎の中年男〉が姿を現し、衝撃の事実を伝えた。果たして二人の行きつく未来は……。瓦礫から這い上がった少年は、その瞳にどんな未来を映すのか。「炎の蜃気楼」「遺跡発掘師は笑わない」の著者が贈る、混沌の時代を生き抜いた男達の、反骨と絆の物語!
第一章 見知らぬ祖国へ
第二章 アメンボとしゃぼん玉
第三章 ありあけの船出
第四章 荒野から来た男
第五章 赤と青
【目次】
感想・レビュー
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よっち
21
太平洋戦争敗戦後、大陸からの引揚船で母とはぐれた中学生・阪上群青。その場に居合わせた赤城壮一郎と共に生きてゆく物語。直後に何かが海に落下する音を聞いていて、謎の男に赤城が君の母親を突き落としたと告げられて、疑惑がぬぐえないまま行く当てもなく、赤城と共に焼野原を生きる群青。近江兄妹と出会った二人が石鹸会社を立ち上げ、共に困難に立ち向かう中で育まれたかけがえのない絆があって、明らかになった衝撃の過去、見守ってくれた赤城への複雑な思いも抱きながら、自ら決めた道を進む群青のこれからをまた読んでみたいと思いました。2025/08/18