出版社内容情報
■第26回ちゅうでん児童文学賞大賞受賞作品
中学二年生の豪太郎が熱中している趣味は、編みぐるみ。特に最近はぶたの編みぐるみに凝っている。だけど、それはクラスメイトにも、幼なじみにも言えない秘密だ。なぜなら、その趣味は「男らしく」ないから。
そんなとき、職場体験をきっかけに「ヤングケアラー」で「不登校児」のクラスメイト、篠田と知り合うことになる。少しずつ知る、篠田の話。家族の事情もあるが、何より自分の意思で家にいること。宇宙に行くという将来の夢……。
「ふつうってなんだろう」という疑問が変化したとき、豪太郎の中にひとつの答えが生まれる。
それぞれの心の痛みを丁寧に描いた力作。
第26回ちゅうでん児童文学賞 大賞受賞作品。
[選考委員:斉藤洋氏、富安陽子氏、山極寿一氏]
内容説明
ほんとうの痛み―。豪太郎には豪太郎の痛みがある。人にはいえない痛みだ。だけど、それが「ほんとうの痛み」といえるのかどうか、自分にもわからない。それぞれの心の痛みが共鳴し、生まれる友情のゆくえは…。第26回ちゅうでん児童文学賞大賞受賞。
著者等紹介
海緒裕[ウミオユウ]
神奈川県出身。2024年、本作『ぶたのしっぽ』が第26回ちゅうでん児童文学賞大賞を受賞し、デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
はる
52
中学二年生の豪太郎は野球部のピッチャーで勉強もできる人気者。実は、編みぐるみが趣味であることを秘密にしている。複雑な想いを抱える豪太郎だが、職場体験をきっかけにヤングケアラーで不登校のクラスメイトの少年と出会い、彼の生き方に影響されていく……。悩みを抱えるふたりの少年が、お互いの存在のおかげで癒され、前に進み出す展開は爽やかです。ただ、やや詰め込み過ぎかも。ちゅうでん児童文学賞の大賞受賞作。2025/06/08
ぶんこ
43
中学2年生の豪太郎君は編みぐるみが趣味。キモイと言われそうなので内緒にして、野球部で活躍。勉強も頑張って、クラスに溶け込む努力は怠りません。クラスに長い黒髪の美しい歩陸君が転校してきます。野球が好きなので野球部に入りたかったのですが、顧問の髪を切れの言葉に断念。周囲に溶け込めずに転校。ヤングケアラーと噂されている不登校の篠田君は、自分の意思を強く持つ。そんな篠田君を知って、豪太郎君も編みぐるみ好きを隠さず、野球部の他に家庭部にも所属しようと考えます。同調圧力の強い日本ですが、豪太郎君頑張れ。2025/09/25
まる子
23
NetGalley 第26回ちゅうでん児童文学賞大賞受賞作品。編みぐるみが趣味の豪太郎。女の趣味みたいで誰にも言っていない。転校生の歩睦は髪が長くてサラサラ。野球部の顧問は「男らしく」をかかげて、入部には髪を切る事を歩睦に教養する。ヤングケアラーの篠田は積極的不登校。現代の10代を取りまく様々な問題を否定せず物語へ落とし込む。誰でも経験していない事は理解が難しいしい。そして自分も含め、周りの「好き」を大事にしたいと思えた。性差でできるできないはあるけれど、「男だから」「女だから」はひと昔前まで。2025/04/25
雪丸 風人
19
主人公はアリバイ野球部員の中学2年生。男らしくないといわれる趣味に密かに没頭する彼が、信念に正直な少年との出会いに、驚き、刺激を受けて、思い切った決断をします。取りつく島もなかった不登校男子が、感情の揺れの激しい主人公との交流で、心を開いていくさまが素晴らしく、読んでいて清々しい気持ちになれましたよ。物語にあふれていたのは、まっすぐな優しさと、まわりくどい優しさ。共生の精神や動物愛護の仕事に出会えるところもいいですね。想像力に働きかけ健やかな心を育んでくれそうな一冊でしたよ。(対象年齢は12歳以上かな?)2025/04/14
あさみ
16
児童書コーナーより。編みぐるみを作っているのは郷太郎という男の子。学校の誰にもバレないようにひた隠しながら、こっそり作品を増やしていく。好きなものを男の子だからという理由で隠さなければならない。先生は男の子だから髪は短くというくせに、女の子のベリーショートはいいのに、と思う豪太郎。みんなそれぞれのアイデンティティがあって、隠さずに生きるという難しさが描かれてて。それを理解してくれる仲間を得て、自分らしさを捨てずにいられることを知ってく姿に勇気をもらえる。個性に悩んでたら、読んだらきっと前向きになれるはず。2025/10/04