出版社内容情報
「嫌われたって、やるしかないんだ」
尾身茂、押谷仁、西浦博ー感染症専門家たちは、コロナ渦3年間、国家の命運を託された。彼らは何と闘い、なぜ放逐されたのか?権と世論に翻弄されながら危機と戦った感染症専門家の悲劇!
小学館ノンフィクション賞大賞受賞の気鋭ライターの弩級ノンフィクション
内容説明
国家の命運を託された感染症専門家たちは、顕彰されることもなく、姿を消した。彼らは当時、何を考え、そしていま何を思うのか?気鋭筆者の弩級ノンフィクション。
目次
第1章 暫定版・日本版CDC―2020年2月
第2章 政敵―2020年4月
第3章 犬笛―2020年5月
第4章 黙殺―2020年11月
第5章 寄り添うか突きつけるか―2021年1月
第6章 専門家の決意―2021年5月
第7章 祝祭―2021年7月
第8章 崩壊―2021年8月
第9章 公衆衛生家の「青春の蹉跌」
第10章 出口はどこだ―2022年3月
第11章 決断せず―2022年8月
著者等紹介
広野真嗣[ヒロノシンジ]
1975年、東京都生まれ。慶應義塾大法学部卒。神戸新聞記者を経て、猪瀬直樹事務所のスタッフとなり、2015年10月よりフリーに。17年に『消された信仰』(小学館)で第二四回小学館ノンフィクション大賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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パトラッシュ
129
科学と政治ほど相性の悪いものはない。合理的な計算による明確な証明に基づき進めるのが科学なら、非合理の極致である人の心や社会的矛盾を合目的に縫い合わせるのが政治なのだから。コロナのパンデミック下にあって理系独裁者の習近平率いる中国はゼロコロナ政策を貫徹したが、日本では専門家の疾病治療と政治家の経済維持という異なる優先目的が正面衝突した。WHOに勤務し政治もわかる尾身氏が仲立ちしてすり合わせていったが、御用学者しか望まない政治家にとっては忌々しいだけの存在だったのだ。いわばコロナ禍を通してみた政治論といえる。2024/03/13
遥かなる想い
67
コロナの専門家たちの苦闘の日々を描いた作品である。 新型コロナ危機の時、専門家たちは何と戦い、 時の首相たちはどう動いたのか。 あまり知られていない当時の政治の裏側が 克明に語られる。感染が拡大する中、 専門家の提言に対して 時の政権の判断が どうしてこんなに遅かったのか? つい最近の出来事だが、あまり知らなかった舞台裏が 克明に今に蘇る ノンフィクションらしい作品だった。 2025/05/14
おかむら
28
コロナ禍の3年間、専門家たちと政府そして移り気な国民(私含む)の攻防戦ノンフィクション。第何派がいつどんなだったかついこないだだったのにこんなにも記憶があやふやになってる自分にびっくりしたわ…。でも色々思い出した! 尾身さんそういえば総理の会見の時に必ずそばにいたよな(菅さんまでは)。あんなに矢面にたたざるを得なかった経緯を知ったいま表紙をみるとジーンとするわ。コロナ対応の功労者に国がちゃんと報奨している英米と比べて日本はあんまりだというのはもっとも。出てくる専門家の中で私の推しは押谷さんです。2024/04/06
空のかなた
24
世界規模での感染症、コロナにより社会が、常識が、生活が大きく変移した時期。この間に感染防止に関わった各分野の専門家のゆるぎない信念と苦悩の記録。ノンフィクションとして、当事者インタビューも含め、貴重な記録となる一冊。政治家でも官僚でも大臣でもない、感染症に関わる専門家が、その場のお茶を濁したり、自分たちの利権を守ることを第一に考える政治家/官僚/利権団体と対峙した記録。尾身さんを始め報道から受け取った印象とは全く違う、その姿勢に頭が下がった。政治家、未曾有の危機だったのだ、しっかりして欲しい。2024/11/29
しーふぉ
21
元々雑誌からコロナの専門家のことを書いて貰いたいという依頼の性質上しょうがないのかもしれないが、対立軸としてしばしば批判的に書いている政治家についても、きちんと取材して反論させないとノンフィクションとして不完全な印象になってしまった。誰もが未経験の出来事を総括する仕事は必要です。政府が出しているレポートは20枚程度らしいのですが…2024/02/25