出版社内容情報
実業家・加右衛門氏へ贋物の置時計を打ってしまった事実を知った伊口。
泥棒に転職をした蓮野とともに、その置時計は加右衛門氏へ所有する美術館にあるという情報を得、盗むことを計画するがーー?
(第1章 加右衛門氏の置時計)
激動の大正時代を泥棒たちが大暴れ! 『絞首商會』『サーカスから来た執達吏』にも繋がる連作短編集。
『方舟』で「週刊文春ミステリーベスト10」「MRC2022」をダブル受賞し話題沸騰の夕木春央、待望の新作!
内容説明
油絵画家の井口が、泥棒に転職した蓮野に相談を持ち込んだ。以前井口の父が美術収集家の加右衛門氏に譲ったオランダ王族由縁の置時計が贋物であり、加右衛門氏が私立美術館の造設を進めているという。美術館に時計が展示されれば、加右衛門氏は大恥を晒す。井口は蓮野とともに、美術館に潜入して本物の時計との交換を試みるが―。(「加右衛門氏の美術館」) 夕木春央真骨頂の大正ミステリー6作書き下ろし!
著者等紹介
夕木春央[ユウキハルオ]
1993年生まれ。2019年、「絞首商会の後継人」で第60回メフィスト賞を受賞。同年、改題した『絞首商會』でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
233
『方舟』に続いて、夕木 春央、2作目です。本書は、大正浪漫レトロミステリでした。『方舟』と比べるとインパクトに欠け、売れない気がします。 https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=00003751942023/06/30
パトラッシュ
195
感想千五百冊目。『絞首商會』の蓮野と井口の迷コンビが奇妙な謎を解決していく連作ミステリは、長すぎて話がわかりにくかった前作に比べすっきり読めて面白い。相変わらずキテレツな人間関係が中心のケレン味たっぷりな組み立ては猿之助歌舞伎の宙乗りのようで、保守的な読者には不評かもしれないが。一方で『方舟』で初めて著者を知った人には、あのヒリヒリするような怖さが皆無なのに失望するかも。これほど方向性の違う作品を書く作家も珍しいが、逆に次は何かと期待してしまう。このシリーズを核に、気分転換で新しいものに挑んでいるようだ。2023/06/02
ちょろこ
138
やみつきになる一冊。銀行員から泥棒に転職した異色の経歴を持つ蓮野と画家の井口コンビが織りなす大正時代泥棒推理劇。自分でもよくわからない箇所をくすぐられるようで、読むほどにやみつきになるようなそんな感覚。たぶん、この二人の醸し出すなんとも言えない雰囲気が笑いをもたらすからかもしれない。飄々とした蓮野がサラッと推理を口にする時、それまで見ていた世界が鮮やかに裏返る、この反転が面白い。七話それぞれ異なる事件の短編なのに最後は壮大な長編を読んだ気分にさせるのも良かった。「光川丸の妖しい晩餐」は最後インパクト大。2023/07/13
とん大西
134
面白くないわけじゃない。上品でウイットに富んだ短編集だと思います。けど、ん~情報量が多くて整理しきれない。『絞首商会』から引き続いての蓮野と井口の名コンビ。大正時代ならではのエッセンスを存分に活かした事件に推理。設定そのものは好みですが、書き手のロジックに追い付くのにちょいと疲れます。2023/05/30
シナモン
127
「方舟」の衝撃はまだまだ記憶に新しい。それとは全く趣きが違う本作。泥棒と画家のコンビが絶妙で面白い。大正浪漫の香りを感じながらのミステリはどこか妖しくもあり、その世界観にどっぷり浸かることができました。ボリュウム満点、読み応えありました。2023/05/11