出版社内容情報
平沢 逸[ヒラサワ イツ]
著・文・その他
内容説明
未解決事件の報奨金目当てに、多摩川の河川敷で拳銃を探す父ちゃんと、雀荘のママ鈴子さん、失恋を引きずる大学生レンアイ…はぐれものたちが集まる夏の岸辺に、記録され得ない時間が立ちあがる。多摩川の河川敷で、五歳の「わたし」の目が映す、ひと夏の奇跡。鮮烈な才能を記すデビュー作!第65回群像新人文学賞受賞作。
著者等紹介
平沢逸[ヒラサワイツ]
1994年東京都生まれ。早稲田大学基幹理工学部数学科卒業。2022年、「点滅するものの革命」で第65回群像新人文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ぽてち
46
多摩川の河川敷で報奨金目当てにあるものを探す父ちゃん、5歳の娘で主人公のちえ、彼らの周りにいる人々がただ喋るだけの物語。改行が少なく濃密な文章は、ちえの一人称ではあるものの明らかに第三者の視点で語られている疑似一人称だ。取り立てて何が起きるわけでもなく特に魅力的な人達でもない。話の内容もくだらないことばかりだ。なのになぜか惹かれる。五感の描写が独特で、でも感覚的に理解できるのが気持ちよかった。純文学らしい作品だった。第65回群像新人文学賞受賞作。2022/11/15
かみぶくろ
44
3.5/5.0 河原の情景を五感フルで描写していく力がすごくて、こんな風に世界を見れたら豊かな人生だろうなと思えた。俗っぽい人物たちの俗っぽい会話も心地良い。ただ話がどこにも展開していかないので、終始ふんわりとした退屈感があった。2024/04/28
名古屋ケムンパス
44
父親の背に負われるような年齢5歳の「わたし」が六郷橋付近の河川敷で見た心象風景が描かれます。雀荘のママや失恋の大学生など登場人物の存在感は極めて希薄なのに、逆に、この世にこれ以上に存在意義を求められることの必要性を問われているようでハッとしてしまいます。著者の今後に興味津々です。2024/03/17
いっち
34
来年小学生になる主人公が語り手。来年小学生とは思えない語りに最初は戸惑うが、次第に慣れることに諦める。父親は多摩川の河川敷に毎日通い、銃を探している。銃は父のものではない。拾って報奨金をもらおうとしている。河川敷で父親は、雀荘のママや失恋した大学生などと、たわいもない会話をする。何か大きなことが起こるわけでもないが読めてしまう。会話が面白く、河川敷の描写が丁寧。語り手である主人公のセリフを書かない選択と、それができる技術。それらも良かったが、一番良かったのはビートルズの「レボリューション9」を知れたこと。2022/12/18
カノコ
29
多摩川の河川敷に集う大人たちを、五歳の少女が語るひと夏の記録。報奨金目当てに拳銃を探す父ちゃん、雀荘のママ、失恋を引きずるレンアイなど、登場する大人たちはみんな割と ”駄目” 寄り。煙草と金とセックスの話。少女の目線は浮遊している。嗅覚、視覚、触覚、色々な感覚がごちゃまぜになっていて、読んでいるうちにわけが解らなくなる。切り取るべきシーンを捨て、どうでもいいことばかりを綴る得体の知れなさ。何も起こらない、というそのこと自体が価値になっている。これほど存在感が希薄な作品を読んだことがないかもしれない。2022/09/25