出版社内容情報
ミステリ;社会派ミステリ;いのちの停車場;安楽死;尊厳死;安楽死を遂げた日本人;神様のカルテ;江戸川乱歩賞;闇に香る嘘;同姓同名;南杏子;知念実希人;夏川草介;医療ミステリー
内容説明
「先生は、患者を救ったんです―」末期がん患者の水木雅隆に安楽死を行ったとして、裁判を受ける天心病院の医師・神崎秀輝。「神崎先生は私から…愛する夫を奪っていったんです…!」証人席から雅隆の妻・多香子が悲痛な声をあげるも一向に口を開こうとはしない。そんな神崎には他にも2件、安楽死の疑惑がかかっていた。患者思いで評判だった医師がなぜ―?“安楽死”をテーマに描く、乱歩賞作家渾身の医療ミステリー!
著者等紹介
下村敦史[シモムラアツシ]
1981年京都府生まれ。2014年に『闇に香る嘘』で第60回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。同作は数々のミステリーランキングで高い評価を受ける。短編「死は朝、羽ばたく」が第68回日本推理作家協会賞短編部門候補、『生還者』が第69回日本推理作家協会賞の長編及び連作短編集部門の候補、『黙過』が第21回大藪春彦賞候補に選ばれた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
352
下村 敦史は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。本書は、安楽死連作ミステリ、最近義父が死去したこともあり、辛い気持ちで読みました。オススメは、第四話「奪われた命」です。このテーマの作品を読むと、尊厳死法制が早く整備されることを望みます。 https://tree-novel.com/works/episode/72363a99f2362494c49f0e8b6f5272e4.html2021/06/23
ウッディ
251
ホスピスでの緩和ケアのその先にあるものは安楽死なのか?末期癌の元ボクサー、ALSの元女優など、耐えられない痛みと絶望そして家族への負担を考えて、命を絶ちたいと願う患者の望みをかなえた神崎は、すべての罪をかぶる覚悟で裁かれる。患者、家族そして看護師や医師などの医療関係者から見える安楽死の意味、死刑執行のボタンを押す刑務官と同じような罪悪感を感じる終末医療処置者の心の負担など、多くの問題提起があった作品だっただけに、医師の懸命のケアで解決するという安易な結末に違和感が残った。2021/11/14
しんたろー
247
安楽死をテーマにした6つの連作短編集は、いつもの「熱い下村節」を抑えめに描いてはいるが、根底には著者らしい熱…中でも下村さんがシベリア抑留の話を書くとは意外にも感じた『奪われた命』はミステリ要素もあって珠玉の出来。 父子の断絶も絡めた『償う命』の終盤は、主人公に近い年齢ということもあって目頭が熱くなった。以前、何かの作品のレビューで「心情を書き込んで欲しい」と偉そうな注文をしたが、本作の心情描写は過不足なく、著者の筆力が上がったことを証明している。簡単に答えは出ない問題だが、真摯な問いかけが心に響く作品。2021/09/22
いつでも母さん
246
安楽死・・究極の緩和ケア・・ホスピス・・ターミナルセデーション…下村さんの新作はホスピス病棟の医師・神崎が3件の不審死で起訴され、結果1件で有罪になった事件の連作6話。医療ミステリーとあるが、これは未だに明確な答えの無い問題提起の作品だ。私は苦痛より安楽死を望むが、現実的にはどの時点で?家族の同意は?引き受けてくれる医師は?と問題は山積みだ。『安らかな死』の捉え方は患者、家族、医師、司法…それぞれ違うだろうが、この国はそろそろ真剣に検討すべきではないのだろうか? 読後感はもやもやとしてしまう。 2021/06/21
タイ子
205
安楽死の是非を問う作品。末期がんの患者の緩和ケアをするホスピスで3件の安楽死事件が医師の神崎によって起こる。その裁判のシーンから始まる本作。どのような経由で安楽死が行われたのか。そして、それは果たして本当に医師の手による安楽死だったのか。問われる医療の現場。ホスピスならではの限られた命に対しての尊厳とそれを見守る家族。裁判で初めて明るみに出る家族の過去。刑務官だった患者。生と死を見つめてきたのは医師だけではない。正しい答えのない作品なので、スッキリ感は味わえないけどミステリ部分は面白く感じた作品。2021/07/11