出版社内容情報
上田 信[ウエダ マコト]
著・文・その他
内容説明
鄭和の南海遠征、万里の長城の大修築―。一三六八年に朱元璋が開いた明朝は、皇帝の威光と巨大プロジェクトに彩られた古代的な王朝だった。一方、一六世紀後半のヌルハチに始まる清朝は近代的な活気に満ち、少数の満洲族の支配下で多数の漢族が闊達に生きていた。倭寇、銀の流通、チベット仏教、アヘン交易など、地球規模の視点で描く五〇〇年史。
目次
第1章 出来事の時空間
第2章 明朝の成立―一四世紀1
第3章 海と陸の相克―一四世紀2
第4章 海と陸の交易者―一五世紀
第5章 商業の時代―一六世紀1
第6章 社会秩序の変容―一六世紀2
第7章 王朝の交替―一七世紀
第8章 産業の時代―一八世紀1
第9章 伝統中国の完成―一八世紀2
第10章 環球のなかの中国―一九世紀
著者等紹介
上田信[ウエダマコト]
1957年東京都生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。現在、立教大学文学部教授。専攻は中国社会史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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榊原 香織
129
面白かった。 わかりやすい。世界史の授業でチラ見した、明の税制、とかが見てきたようにわかる。鄭成功や海賊の活躍など、元々面白い部分ではある。12冊シリーズの9。今年中に全部読めるかなあ?2024/12/07
Tomoichi
22
経済という視点で明・清時代を見ると、こんなに面白いのかと思ってしまう。しかし明王朝って清に比べるとずっとドタバタな感じでもう支那文明の限界が見えてくる。その点、清は少数の満州族が治めたので古代的な支那から脱却し、それが大幅な人口増にも繋がる。しかし歴史とは皮肉で、それが清末から辛亥革命・中華人民共和国成立・現代までの混乱の要因にもなっている。清は支那文明の最後の輝きの時代だったのかもね。2022/11/26
さとうしん
19
グローバルヒストリーの手法でとらえる明清史。朝貢、互市、日本との関係など海上交易だけでなく、時代区分の問題など、話題は多岐にわたる。個別の話題では、『三宝太監西洋記』が意外に参照に足る海外の情報が盛り込まれているという史料的評価、張保など19世紀の南シナ海の海賊が明代の倭寇とは異なり、歴史的な役割を果たせなかったという話が面白い。最後のマルクスと「ミッチェル報告書」の話も見事。2021/03/18
coolflat
18
47頁。元朝はウイグル商人やムスリム商人が運営していた銀を価値の基準とする経済システムによって支えられていた。この帝国はもっぱら商業活動から税金を徴収し土地税には依存しなかった。商業税は銀で徴収され中央政府のもとに集められた銀は元朝からユーラシアの各地に展開したモンゴル帝国内の領主や貴族に贈られた。元朝がモンゴル帝国の盟主として認められるために、こうした贈り物が必要だったからである。帝国各地に分配された銀はムスリム商人やウイグル商人が運営する商社に投資され、絹織物や陶磁器などを購入するために用いられた。2025/01/01
ジュン
15
同シリーズの中国史のなかで一番の作品どころか、ここ数年で最も面白い「世界史」だ。ウォーラーステインの「近代世界システム」を明清時代に合わせると視えるものがある。かといって伝統中国史から逸脱せず、しかもオーラルな官僚や民衆の声を多く引用する。異色だが出色の作品、本当におススメ。2022/02/13