出版社内容情報
庄野 潤三[ショウノ ジュンゾウ]
著・文・その他
内容説明
磊落な浪人生の兄と、気立ての優しい中学生の弟。男の子二人のおかしみに満ちたやりとりを見守る姉は、間もなく嫁いでゆく。自然に囲まれた丘の上の一軒家に暮らす作家一家の何気ない一瞬に焼き付けられた、はかなく移ろいゆく幸福なひととき―。人生の喜び、そしてあわれを透徹したまなざしでとらえた、名作『絵合せ』と対をなす家族小説の傑作。
著者等紹介
庄野潤三[ショウノジュンゾウ]
1921・2・9~2009・9・21。小説家。大阪生まれ。大阪外国語学校を経て九州帝国大学卒。1946年、島尾敏雄、三島由紀夫らと同人誌を発行。教員、会社員を経て小説家に。55年に、「プールサイド小景」で芥川賞受賞。57年から1年間、米国オハイオ州ガンビアのケニオン大学で客員として過す。60年、『静物』で新潮社文学賞、66年、『夕べの雲』で読売文学賞、71年、『絵合せ』で野間文芸賞を受賞。芸術院会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
こうすけ
18
丘の上の家で、家族五人仲良く暮らしてきた井村家。娘が嫁ぐことになり、その前後の日々が描かれる。と、いっても庄野潤三なので、結婚式や引っ越しの日のことなどは省略され、男兄弟の淡々としたやりとりに焦点が当てられる。でも底の方に一抹の寂しさが漂っていて、『夕べの雲』よりも良かった。なにも起きないけどクセになる小説。2023/01/15
ゆかっぴ
9
山の上に暮らす5人家族。長女の結婚が決まり準備する様子や弟たちの日々の生活など家族それぞれの様子が丁寧にユーモラスに描かれています。庄野作品を読むといつも日々の暮らしを大切にしようと思います。2021/02/18
qoop
8
長女の結婚前後に材を取り、息子二人を中心に書き進められた短編連作。軽妙で微細な家族のスケッチで、日々の何気ない一コマに淡々とした筆致で焦点を当てる。良質なユーモアを味わえた。文章によって固定された著者らの生活は、過ぎた後に平凡さこそが切なく輝くのだと教えてくれるようで… 主な読者として中学生を想定して書かれたそうだが、ノスタルジックな感慨に浸ってしまうのはそのせいか。2020/10/25
mawaji
5
日経土曜朝刊「半歩遅れの読書術」で江國香織さんが「野鴨」を紹介していたのを読んで、図書館に置いてあった本書をとりあえず手に取った初庄野潤三。明夫と良二はちょうど私の兄の年代に相当するようで、娯楽の少ない昭和の時代でしたが兄弟で腕相撲したし、兄の部屋には鉄啞鈴やエキスパンダーがあったし、実家の山椒の木には揚羽の幼虫がいたし、子どもの頃のノスタルジーに浸りながら読みました。遠くなった昭和のかけがえのない瞬間を思い起こしながら読了。いつでもそこにあると思えるものも、実際にはいつもそこにあるわけではないのですね。2022/06/30
sashawakakasu
5
やさしい夫婦。仲の良い兄弟。昭和の家族の温かみを存分に味わった。2020/08/22