出版社内容情報
薬丸 岳[ヤクマル ガク]
著・文・その他
内容説明
飲酒運転中、何かに乗り上げた衝撃を受けるも、恐怖のあまり走り去ってしまった大学生の籬翔太。翌日、一人の老女の命を奪ってしまったことを知る。自分の未来、家族の幸せ、恋人の笑顔―。失うものの大きさに、罪から目をそらし続ける翔太に下されたのは、懲役四年を超える実刑だった。一方、被害者の夫である法輪二三久は、“ある思い”を胸に翔太の出所を待ち続けていた。贖罪の在り方を問う、慟哭の傑作長編。
著者等紹介
薬丸岳[ヤクマルガク]
1969年兵庫県生まれ。2005年に「天使のナイフ」で第51回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。2016年に『Aではない君と』で第37回吉川英治文学新人賞を、2017年に短編「黄昏」で第70回日本推理作家協会賞“短編部門”を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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乱読太郎の積んでる本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鉄之助
545
飲酒ひき逃げ事件を起こした20歳の大学生、翔太は本当に罪の意識があるのか? 途中、もどかしくなりながらも、夢中で読ませる面白さ。罪と向き合う、とはどうゆうことか? 例え、満期で刑務所を出所したとしても、決して罪を償ったこととにはならないと、考えさせられる場面も多かった。ただ、刑務所内での描写がほぼ、カットされていたのは、私的には残念。ともかくラスト10ページ、意外な展開に思いっきり泣かせていただきました。薬丸さん、ありがとう。2023/10/31
starbro
500
新型コロナウィルス対策購入シリーズ第26弾、薬丸 岳は、新作中心に読んでいる作家です。著者らしい贖罪の社会派ミステリの感動作でした。思わず涙ぐんでしまいました。舞台が我が家の周辺なので、親近感も湧きます。2020/05/02
nobby
337
つくづく薬丸さんの優しさを噛み締める…どう転んでも一筋の光も見いだせない贖罪に、清らかな未来を用意する結末は素敵だ。著名教育評論家を父に持つ翔太。冷戦状態の恋人から深夜に届いたメールは「今すぐ会いに来てくれなければ別れる」酒は呑んでいたものの大雨の中、若葉マークでの久々の運転が招いた結果は…とにかくプロローグからもう起こる悲劇がほぼ予測出来るだけに読み進めるのが辛い…ただ、中盤からは被害者の夫が何故に加害者に執念深く会おうとするのか追う展開に惹き込まれた。双方に『告解』出来る相手の存在があったことが救い…2020/06/16
しんたろー
335
薬丸さん新作は、他の作品群でもテーマとしている「被害者と加害者」…老女を飲酒運転で轢き逃げしてしまう籬翔太と被害者の夫・法輪二三久を主軸にした物語は心情が過不足なく盛り込まれ、短い章立てを効果的にテンポ好く進むので、重く辛い話ながらもページをめくる手が止まらない。身近な「明日は我が身」と思う事件ゆえ双方の想いに共感し易く、翔太の恋人・綾香を巧い役割として配置してあるのも絶妙!二人の名字(マガキとノリワ)が珍しいのは狙いとして判るが、覚えられないのが難点。とは言え、ラスト30ページは涙が滲む感動を貰えた。2020/07/03
ウッディ
332
飲酒運転をして、ひき逃げ死亡事故を起こした大学生の翔太。実刑を受け、出所した翔太を待っていたのは、一家離散の事実とまともに就職できない現実だった。そんな時、被害者の夫は、探偵を使って翔太の居所を探し出し、同じアパートに越してくる。彼の目的は?一瞬の心のゆるみで起こした事故で、自分の家族と被害者家族の人生を狂わせることになった翔太の悔いは、読んでいて苦しくなるほどのリアリティがあった。そして、タイトルの「告解」の本当の意味、心からの謝罪をする時、もう一度やり直せるという希望が垣間見えたエンディングでした。2020/08/09