出版社内容情報
佐藤 究[サトウ キワム]
著・文・その他
内容説明
女子高生の亜李亜は、猟奇殺人鬼の一家に生まれ、郊外でひっそり暮らしていた。父は血を抜いて殺し、母は撲殺、兄は咬みついて失血させ、亜李亜はナイフで刺し殺す。ところがある日、部屋で兄の惨殺死体を発見する。翌日には母がいなくなり、亜李亜は父に疑いの目を…。第62回江戸川乱歩賞受賞の長編ミステリー。
著者等紹介
佐藤究[サトウキワム]
1977年福岡県生まれ。2004年に佐藤憲胤名義で書いた『サージウスの死神』が第47回群像新人文学賞優秀作となりデビュー。’16年『QJKJQ』で第62回江戸川乱歩賞を受賞。’18年、受賞第一作の『Ank:a mirroring ape』で第20回大藪春彦賞および第39回吉川英治文学新人賞のダブル受賞を果たす(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ろくせい@やまもとかねよし
292
壮大なテーマを背景としたミステリー。とても興味深い物語で刺激的な時間だった。人間自体が如何に脅威で、恐怖の根源であるかを問う。猟奇的殺人の恐怖と資本主義の恐怖を重ね展開させる物語。猟奇殺人の動機は理解できるだろうか。民主的統治の根源は殺人を許容してはいないか。人間は、事実を全く無視し、意識で殺人を容認してはいないか。殺人は異常ではないのではと問う。最大の恐怖。それは、このような人間の社会が共有するありもしない正義への妄想と訴えているか。人間の意識で生じる利他。やはりそれは利己の一部に過ぎないのだろうか。。2021/07/22
ナルピーチ
185
家族全員、猟奇殺人鬼。女子校生の“アリア”を軸として始まる物語。自宅で兄が殺され、母が行方不明となる。その異様な状況に、アリアは父に疑心を抱くようになるのだが…。なるほど、そうくるか!想像した展開とはまったく違う。最初と最後でガラリと変わる独特な雰囲気に、見事なまでに意表を突かれた。哲学的な要素を交えるその構成に難しさを覚えつつもなんとか読了。個人的には前半の勢いのままに突っ走る展開がお好みだったけども、たまにはこういう変化を味わえる小説もありか。最後に一言。パン切り包丁…今は見ないようにしておこう。2022/07/10
イアン
119
★★★★☆☆☆☆☆☆江戸川乱歩賞を受賞した佐藤究名義のデビュー作。一家全員が猟奇殺人鬼という特異な環境で育った高校生の亜李亜。ある日兄が惨殺され母も姿を消してしまう。犯人を追うべく過去を調べ始めた亜李亜が気付いてしまった驚愕の事実とは…。殺人を示唆する業界紙、存在しない戸籍の謎に期待が高まるが、逆にいえばここがピークだったように思う。乱歩賞の選考で大御所作家2名が絶賛しているので名著なのだとは思うが、突飛過ぎる設定や哲学的な考察が脳内で空回りし、1/3も伝わらなかった。自分の未熟さを思い知る読書となった。2024/02/17
JKD
100
猟奇殺人のスペシャリストファミリー?初めの舞台は理解。ただそれ以外が謎だらけ。得体の知れない恐怖と不安、狂気さらに混乱。もうカオスの極み。先が気になってどんどん読み進めると、真実を知りたいような知ってはいけないような不思議な気持ちになるが、それも心地よい。突如現れる謎が恐怖になり大きな波になる臨場感も快感。殺人の解析とか定義付けとか小難しいワードも気にせず読む。そして爽快なエンディング。とにかくブッ飛びすぎて圧倒されました。2018/09/20
かみぶくろ
85
家族全員猟奇殺人鬼の設定とキレのある導入はすごく好きだが、中盤からのリアリティの崩壊がちょっと残念。いや、家族全員猟奇殺人鬼も十分リアリティないんだけど、作家が国家を語りだすときに時折滲み出てしまう「世間を知らない人が色んな本読んで机上で膨らませた妄想」臭が強くて、エンタメ脚色とは知りつつも、なんか苦笑してしまった。2018/10/06