出版社内容情報
山上 浩嗣[ヤマジョウ ヒロツグ]
著・文・その他
内容説明
「クレオパトラの鼻がもっと短かかったとしたら、地球の様相の全体は一変していただろう」などの警句で有名な『パンセ』―一見、近づきやすそうなこの作品は、しかし実際に手にすると、思いのほか読みにくい難物である。それゆえ第一級のパスカル研究者が『パンセ』の魅力を味わい尽くすために書き下ろした全40章。1日1章、最高の読書体験を!
目次
『パンセ』の成り立ち
馬鹿
人を愛する
不快を耐えよ
想像力
動物たち
機械と習慣
三つの秩序
圧政
蚊の力〔ほか〕
著者等紹介
山上浩嗣[ヤマジョウヒロツグ]
1966年生まれ。京都大学文学部卒業。東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学。パリ・ソルボンヌ大学にて文学博士号。現在、大阪大学大学院文学研究科教授。専門はフランス文学・思想(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
132
パスカルつながりで最近出たこの本を読んでみました。パンセを40の章に分けてそれぞれ題名をつけてわかりやすく説明してくれます。「分け前」のところでは確率論が出てきます。数学的才能もかなりのものだったということなのでしょう。また途中にコラムが5つほどあり、パスカルの普段着のような面も教えてくれます。楽しい本でした。2017/03/04
ころこ
37
第7章に「身体」「精神」「慈愛」とあり、第12章にも「天空」「その先」「原子」とあり、極小に思えた空間が同じ比率で極大の世界を包含している一方で、「中間」とは人間の別名だといいます。この「中間」は第11章でも「中庸」という理想には程遠いあり方をアイロニカルに表現するために登場します。壮大な世界観をみせつつ、対照的に強調される卑小な人間の姿は、表現しきってしまうと卑小さの表現にはならない。そこで、分かる人には分かる言い切らない書き方の工夫があり、そこに味わいをみつけるのが『パンセ』を読むコツだと分かります。2021/06/09
ラウリスタ~
17
この本の魅力はパスカルに「でも先生、ちょっとそりゃ無理がありませんかね」といちいち茶々を入れながら、『パンセ』に飲み込まれることなくパンセを読む道を示すところにある。「賭けの断章」に関する3章分は見事で、一般的な理解(神ありに賭けた方がお得!)を二転三転させた所にまで読者を引っ張っていく。コラムは必見、馬車に関する章などは最近調査されたのだろう。現代日本人(非キリスト教徒)がパンセをそのまま読んでも到底説得されることはないだろう、それでも護教論という意図を超えたところの普遍性が我々をいつまでも魅了する。2019/02/01
かふ
16
パスカル『パンセ』の言葉をキーワード的に40のトピックで解説した本である。パスカルの言葉は逆説の論理で哲学者というより詩人に近いと思う。有名な「人間は一本の葦にすぎない」も論理的には破綻しているが、詩として読めば葦は象徴的で実直なまでの言葉なのである。直感という論理学よりは詩的言語にふくまれるのではないか?勿論、そこから哲学的に論理を構築していくのは哲学(論理学)と言えるのかもしれない。https://note.com/aoyadokari/n/n4ce20ee1250b?from=notice2022/12/06
ざっきい
6
ふと目につき読んだ本。「パンセ」の字句だけではなく、17世紀という背景も紹介しているところが良い。宗教改革を受けてのジャンセニスム、ポールロワイヤル修道院、デカルトの合理主義、ピュロン主義といった思想や、公共交通の始まりや演芸の影響など面白い。最後に、「大衆の反逆」の著者オルテガは、「しかし私は、誰かがパスカルを引用したら用心すべきだということをかなり前から知っている」と言ったとか。2017/01/12
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- 和書
- 玉勝間 〈上〉 岩波文庫