出版社内容情報
綾辻 行人[アヤツジ ユキト]
著・文・その他
内容説明
大いなる謎を秘めた館、黒猫館。火災で重傷を負い、記憶を失った老人・鮎田冬馬の奇妙な依頼を受け、推理作家・鹿谷門実と江南孝明は、東京から札幌、そして阿寒へと向かう。深い森の中に建つその館で待ち受ける、“世界”が揺らぐような真実とは!?シリーズ屈指の大仕掛けを、読者は見破ることができるか?
著者等紹介
綾辻行人[アヤツジユキト]
1960年京都府生まれ。京都大学教育学部卒業、同大学院修了。’87年に『十角館の殺人』で作家デビュー。“新本格ムーヴメント”の嚆矢となる。’92年、『時計館の殺人』で第45回日本推理作家協会賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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乱読太郎の積んでる本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
758
初読の時はイマイチだったが楽しめた。当時は私の好みが極端に"推理小説"よりも"探偵小説"に偏っており、こういう仕掛けはあまり琴線に触れなかったからだろう。今作は本質的に、読者を含む"観客"に向けて開かれている。世界内で起こった事件自体は本当にたいした事ない。「ふぅん」で終わってしまう人も相当数いそう。たしかに伏線だらけなものの「ほら、ココにちゃんと書いてありましたよぉ」的な回収の仕方は若干くどい。シリーズの中でも、コレと奇面館は華麗に決めきれていない。あと、「それを伏線と言われてもねぇ…」なものも多い。2017/05/27
Kircheis
543
★★★☆☆ 館シリーズ第6作目。 前作に続いて江南が登場。島田も無事に鹿谷に名前チェンジして安定感とマンネリが同居する。 ミステリなので犯人当てが主題かと思わせといて、意外なクイーンの名作『神の灯』ばりの仕掛けであっと驚かせる趣向。 終盤の鹿谷による解説の途中までその真相には気付かなかったものの、そこまで驚くこともなかった。 逆に犯人の正体、トリック、動機の全てが取ってつけたようなオチだったので、シリーズの中ではインパクトの薄い作品になったように思う。2025/05/16
イアン
274
★★★★★★★☆☆☆新装改訂版のトリを飾る「館」シリーズ第6弾。火災で記憶を失った黒猫館の元管理人・鮎田冬馬の元に残された一冊の手記。1年前の殺人と死体隠匿の様子が生々しく記された真偽不明のそれを頼りに、鹿谷と河南は北海道・阿寒にあるという黒猫館へ向かうが…。他のシリーズ作と比べると事件自体は地味だし密室トリックもやっつけ感があるけど、世界が反転するような仕掛けと伏線の巧みさは見事。ただ順番通りに読まない人もいると思うので、最後にある『時計館』の壮大なネタバレは新装改訂に合わせて見直してもよかったと思う。2021/06/26
しんたろー
229
館シリーズ第6弾…黒猫館と呼ばれる僻地の洋館で起こった怪事件を、その管理人の手記と一年後の編集者・河南の主観による章が交互に進行して謎を解いていく形式。今回も丁寧に伏線を張ってミステリとしての楽しさを提供しつつ、筆者らしい妖しい雰囲気も漂っているが、事件自体は地味な印象なのが残念。それでも、最終章での解明は「そうきたかー!」と唸ったし、練られた文章は流石。『時計館』や『迷路館』の方がトリック、大仕掛け感、哀しい真相など好みだったが、本作も上質な本格ものである事に変わりはなく、第一人者の筆力は凄いと思えた。2019/11/28
パトラッシュ
226
館シリーズなのだから、館そのものがトリックの核となるクイーンの名作に対するオマージュ物を一作は書こうと作者も考えていたはず。その意図は買うし作品の出来も悪くはないが、さすがに初読時は作りすぎの感が拭えなかった。反社会派の旗を掲げる新本格にリアリズムを求める愚は承知だが、あまりに納得し難い設定とトリックに思えたからだ。しかし21世紀の今日に読み直すと、社会派を知らない若い読者が「ミステリは何でもありでいいんだ」と受け止めて、特殊設定物を生み出す契機になった気がする。いわば本書はミステリ界の『腹腹時計』かも。2025/11/02
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